【8月29日 AFP】英イングランド南東部ケント(Kent)州にある、一見すると周囲の建物と何ら変わりがないごく一般的な家屋。唯一の違いは、英国王室御用達の証しである「ロイヤルワラント」が掲げられている点だ。

 アシュフォード(Ashford)近郊ビデンデン(Biddenden)にあるこの建物の中には希少なピアノや少し変わったピアノ26台が置かれている。米カリフォルニア出身のデービッド・ウィンストン(David Winston)さんが生涯かけて集めたコレクションだ。

 間もなく、このコレクションのすべてが競売にかけられる。中には6万ポンド(約900万円)の値が付くと予想されているものもある。

「私はもう71歳になるので、そろそろいいかな」とウィンストンさんは言う。今はピアノを専門としているが、もともとはバイオリン製作家として修業を積んだ。

 これまでに手掛けたピアノには、エリザベス女王(Queen Elizabeth II)のものあった。ただ、女王のピアノについては「いくつか手掛けたことがある」ということ以外、あまり語りたがらない。それには理由がある。以前、女王に下着を提供していたランジェリーブランドの女性が仕事の内容を外に漏らしてしまい、王室御用達の指定を取り消されたことがあるのだ。

 その他には、フレデリック・ショパン(Frederic Chopin)が所有していた仏「プレイエル(Pleyel)」のピアノもあった。ウィンストンさんにとってショパンは「偉大な英雄」なのだという。

 また、ハンガリー国立博物館(Hungarian National Museum)で、ルートウィヒ・ベートーベン(Ludwig Van Beethoven)のピアノの作業を依頼されたこともある。

 ウィンストンさんは「部屋に入ると、ベートーベンのピアノが目の前に置いてあり、鳥肌が立ちました」と、ブロードウッド(Broadwood)製のピアノを前にした時の印象を振り返る。