【8月25日 東方新報】中国の若者の間で「劇本殺」という体験型ゲームがはやっている。市場規模は2600億円を超え、モノを買う消費から「コト消費」に重心が移っている中国の消費市場を象徴している。

「劇本殺」はゲームで起きた架空の殺人事件をめぐり、参加者たちが探偵ドラマのように推理し、犯人役を突き止めるパターンが多い。参加者は脚本で決められた役を振り分けられ、店舗の貸衣装を着て、メークをすることもある。大まかなキャラ設定やストーリーの軸は説明されるが台本はなく、自らの役を演じながらストーリー展開の中で推理を積み上げていく。

 参加者は5人程度から多くて10人ほど。物語の舞台は、現代の都市から古代中国の宮廷までさまざま。時代や場所を越えてドラマの俳優のような感覚が味わえるのが魅力だ。「劇本殺」の「殺」はミステリーの意味合いがあるが、中国で大流行した三国志の英雄キャラを使ったテーブルカードゲーム「三国殺」の名前にも由来している。

 友人同士の参加が多いが、店舗で初めて会った人と演じる「拼車(相乗り)」も増えている。SNSのグループチャットで仲間を増やす人も多い。値段は安い店舗では50~100元(約845~1690円)ほどで、「100元で知らない人生を楽しめる」とも表現される。

 劇本殺の店舗は全国に3万店舗以上あり、利用者は940万人に上る。20代後半の女性、孫一然(Sun Yiran)さんは「多い時は週4回、店に行きます。役を通じて新しい自分に出会える感覚がたまらない。同じ趣味の友達もできました」と話す。中国の劇本殺市場は2021 年に154億2000万元(約2606億円)に達すると予測され、7割以上が30歳未満の若者だ。

「もうかる」と分かると、他業界の企業や個人も含めて一斉に参入するのが中国社会の特徴。「劇本殺」の店舗は次々と誕生しているが、他の店舗が考えた脚本をパクった海賊版や、ストーリーの魅力が乏しい脚本の店も一部にはある。しっかりした脚本や設定、貸衣装やメークなどをそろえた店舗は参加料が500元(約8451円)程度になる。安さを重視した店舗では「つまらない」「どこかで体験したようなストーリー」とネットの感想が広がり、1か月ですぐ閉店することも。激しい淘汰を繰り返しながら、劇本殺の人気は広がっている。(c)東方新報/AFPBB News