【8月24日 東方新報】東京五輪で金メダルに輝いた中国の14歳女子選手の人気が国内で急上昇し、彼女の実家を見ようと1日に2千人のやじ馬が詰めかける騒動に発展した。インターネットのブロガーやインフルエンサーがアクセス数を稼ぐため訪れており、悪質な行為に規制を求める声も出ている。

 東京五輪中国代表最年少の全紅嬋(Quan Hongchan)選手は8月5日、高飛び込みの決勝で審査員全員が満点をつける完璧な演技を2度も披露し、圧勝で金メダルを手に入れた。中国では伝統的に飛び込み種目が強く、関心は高い。今回はそれだけでなく、全紅嬋選手が広東省(Guangdong)湛江市(Zhanjiang)の貧しい農村の生まれで、中国メディアの取材に「お母さんが病気なので、治療費のためお金を稼ぎたい」と答えたことで注目が集まった。彼女のインタビューを聞いた地元企業がさっそく実家に20万元(約338万円)と花束を贈ったが、父親が「娘の栄誉を利用したくない」と花束だけ受け取ったことで、「素晴らしい家庭だ」とフィーバーがさらに巻き起こった。

 全紅嬋選手の実家がある農村は300世帯ほどが暮らし、大半がサトウキビや米を栽培して暮らしている。そこに1日で500台以上の車が詰めかけ、2000人のやじ馬が実家を取り囲んだ。インフルエンサーやブロガーは実家の前で生中継し、中には木に登って家の中をのぞき込むことも。現地に台風が襲来した時も、大雨の中で「こちらが全紅嬋選手の実家です」とまるで災害報道のように中継する人もいた。新型コロナウイルスの感染が広まる恐れもあり、たまりかねた村が外部からの入村を規制し、ようやく騒ぎが沈静化した。

 こうした「ネットのアクセス稼ぎ」の問題は他でも起きている。7月に河南省(Henan)で記録的豪雨が発生した際、洪水で家が流される場面や住民の救助シーンをネットで生中継したり、救命ボートを勝手に使って現場リポートしたりする市民がいた。

 中国メディアは「ネットの悪質な生中継の流れを断ち切るべきだ」と指摘。ユーザーにはこうした動画を見ないように呼びかけ、ネット配信企業にも規制を求めている。東京五輪開催中、中国のネット民が五輪アスリートを非難する書き込みが増えた際、ショート動画プラットフォーム2強の「抖音(Douyin)」と「快手(Kuaishou)」は問題のあるアカウントを凍結する措置を取っている。ネット世界の過熱ぶりに、当局の規制を求める声も高まっている。(c)東方新報/AFPBB News