【8月22日 AFP】イスラム主義組織タリバン(Taliban)が実権を掌握したアフガニスタンで、首都カブール北方のパンジシール渓谷(Panjshir Valley)が反タリバン勢力の最後の主要拠点となっている。しかし、タリバンが総攻撃を開始すれば、抵抗勢力は苦戦を強いられると専門家らは指摘する。

 ヒンドゥークシュ(Hindu Kush)山脈に囲まれたパンジシール渓谷は長らく、反タリバン勢力の要衝として知られていた。

 アフガニスタン各地がタリバンに制圧される中、今でもタリバンの支配が及んでいないのはパンジシール渓谷だけとなっている。

 アムルラ・サレー(Amrullah Saleh)第1副大統領と、過去の反タリバン闘争で最も有名な指揮官だった故アフマド・シャー・マスード(Ahmad Shah Massoud)元国防相の息子であるアフマド・マスード(Ahmad Massoud)氏がパンジシール渓谷に逃れ、タリバンに対する抵抗を呼び掛けている。 

 アフマド氏は米紙ワシントン・ポスト(Washington Post)に寄稿し、「父の足跡を追う準備ができている。ムジャヒディン(イスラム戦士、Mujahideen)らもタリバンと再び戦う準備が出ている」とつづり、米国に軍事的協力を求めた。

 しかし、専門家らは、パンジシール渓谷の抵抗勢力がタリバンにとって深刻な脅威となり得るか疑問視する。

 アフガニスタンを専門とする仏パリのソルボンヌ大学(Sorbonne University)のジル・ドロンソロ(Gilles Dorronsoro)氏は、「タリバンはまだパンジシールに進入しようとしていない」と指摘。「タリバンはパンジシールに入る必要すらなく、封鎖するだけで十分だ」との見解を示した。

 スウェーデンのルンド(Lund)を拠点とするフリーランスの研究者、アブドル・サイード(Abdul Sayed)氏は、抵抗のチャンスがあるというアフマド氏の楽観論は共有できないと述べた。

「タリバンは全方位からパンジシールを包囲している。アフマド氏が数か月以上抵抗を続けられると思わない。現時点で、アフマド氏には強力な支援がない」 (c)AFP/Lucie PEYTERMANN and Fabien ZAMORA