【8月22日 AFP】イスラム主義組織タリバン(Taliban)に制圧されたアフガニスタンからの米国と同盟諸国の退避は、混迷を深める危険な状況下で、「時間と空間」との闘いになっている。欧州連合(EU)は、希望者全員を時間内に退避させるのは「不可能」な恐れがあると警告している。

 タリバンのアフガン制圧から6日。いまだ数万人が国外脱出を試みており、史上最も困難な空輸作戦とも呼ばれている。

 米国の管理下にあるカブール国際空港(Kabul International Airport)の外には、必死になった人々が殺到し、暑さの中、何時間も何日も待ち続けている。子どもの姿も交ざっており、退避の遅れで命を失った人もいる。

 英スカイニューズ(Sky News)は21日、空港の外で白い防水シートに覆われた少なくとも3人の遺体の映像を放映した。死因は明らかになっていない。

 空港にいたスカイニューズ特派員のスチュアート・ラムゼイ(Stuart Ramsay)氏は、こうした死は「避けられない」と述べ、群衆の先頭にいる人々は「押しつぶされ」、他の人々も「脱水症状を起こし、恐怖に陥っている」と伝えた。

 タリバンと米軍を隔てる非公式の緩衝地帯を囲む有刺鉄線の間には、奇跡を願う家族が押し寄せ、空港への道は交通渋滞でふさがれた。

 2000年代半ばに米国大使館で働いていたという男性は、ワッツアップ(WhatsApp)で脱出方法の情報を共有するグループに「どうか、どうか、助けてほしい…どこへ行けばいいのか、どうすればいいのか」と書き込んだ。

 米軍は今月31日までに退避を完了させる予定だ。米国防総省のジョン・カービー(John Kirby)報道官は、「周知の通り、われわれは時間と空間の両方と闘っている」と、切迫感をにじませている。

 さらなる負け戦だとの見方もある。

 EUのジョセップ・ボレル(Josep Borrell)外交安全保障上級代表(外相)は、「彼らは月末までに6万人を退避させようとしている。計算上、不可能だ」と述べた。

 AFPの取材に応じたボレル氏は、米軍の空港警備が厳しすぎて、欧州諸国のために働いていたアフガニスタン人が立ち入れないため、「米国側に苦情を申し入れた」と明かした。「滑走路に人が残っているのに飛行機が離陸している」と言う。

 ジョー・バイデン(Joe Biden)米大統領は、空輸作戦は延長可能だとしている。しかし、ボレル氏は自分の知る限り、そうした決定はまだなされていないと語った。

 米国はまだアフガン国内に残る自国民に対し、空港ゲート付近には「潜在的な安全上の脅威」があるため、他に指示がない限り近づかないよう呼び掛けている。

 一方、空港へたどり着こうとするアフガニスタン人に対する、タリバン戦闘員の暴行や嫌がらせの報告も出ている。

 バイデン政権は最大で1万5000人の米国民を退避させる必要があり、さらにアフガニスタン人の協力者やその家族5万~6万人を脱出させたいと考えている。他国も数千人単位の救出を望んでいる。

 21日の米国防総省発表によると、今月14日の作戦開始以来、米国人2500人を含む1万7000人の退避が完了した。また、数千人が米国以外の軍用機で脱出している。(c)AFP/David FOX