【8月25日 AFP】英スコットランド北東部にあるウイスキー蒸留所では、製造過程で出る廃棄物をトラックの燃料として利用している。

 ダフタウン(Dufftown)にあるグレンフィディック蒸留所(Glenfiddich Distillery)の倉庫では、「ドラフ」と呼ばれるウイスキーの搾りかすがトラックの荷台から降ろされ、積み上がった山からは湯気が立っている。

 この大麦の蒸留かすと、同じく蒸留過程で出る「ポットエール」というビールのような黄色い廃液を混ぜて嫌気性処理を行うと、低炭素のバイオガスが生成される。

 メタンを主成分とするこのバイオガスは、敷地内に置かれたタンクに貯蔵されている。そして、バイオガス用に改造したトラックの燃料として使われる。

 蒸留所の所長、カースティ・ダニャン(Kirsty Dagnan)さんは「ポットエールやドラフといった廃棄物を取り出し、車の燃料にできるガスに変換しています」と説明する。

「国内各地に蒸留酒など自社製品を輸送するために、超低炭素の再生可能資源を燃料とする車両を所有しています」

 蒸留所内に燃料補給所があり、トラックはウイスキー生産の全工程における輸送作業を担っている。

 バイオガスの利用によって、大気中に放出される二酸化炭素(CO2)量をトラック1台当たり約250トン削減できる。

■蒸留所初のバイオガストラック

 2010年、エディンバラ・ネピア大学(Edinburgh Napier University)の研究者らは、ウイスキーの蒸留過程で銅製の釜に残るかすと廃液を使用して、バイオ燃料を造ることに成功したと発表した。

 環境保護活動家らは、森林や野生生物に無害なバイオ燃料の生成に称賛を贈った。

 蒸留かすによる発電は広く行われているが、蒸留所として自社トラックの燃料にバイオガスを使用したのは、グレンフィディックが初めてだ。これまでにトラック3台をバイオガス車に改造した。

 今後は所有する全トラック20台でバイオガスを利用する意向で、ゆくゆくは蒸留酒業界全体にバイオガス利用が広まることを期待している。

 映像は8月6日撮影。(c)AFP/Stuart GRAHAM