【8月20日 東方新報】上海市長寧区(Changning)の虹橋社区(コミュニティー)に、中国で初めての人工知能(AI)を活用した住民向け食堂が誕生した。全自動調理器が100種類以上の料理を調理し、支払いもキャッシュレスで行われている。

「夏は暑くて料理をする気も起きないから、本当に助かるよ」。地元に住む高齢女性の沈美娟(Shen Meijuan)さんは、AI食堂で豚の角煮、えびの塩焼き、野菜の炒め物、ごはんと野菜スープを注文した。AIがその日の温度や湿度も考慮してレシピを調整し、ロボットが調理。機械のアームが食事を皿に盛り付けする。長寧区の高齢者カードで3元(約50円)の割引もあり、料金は18.5元(約313円)。通常の飲食店より10元(約170円)ほど安い。支払いはスマートフォンのQRコードや顔認証技術で済ませる。

 AI食堂は面積130平方メートル。通常は調理スペースに30平方メートルは必要だが、人のいないAI食堂は15平方メートルで済む。おかゆ、麺類、ワンタン、肉まん、流沙包(カスタードあん入りまんじゅう)、煎餅(中華式クレープ)、揚げパン、小籠包など種類は豊富。1日3食でも楽しめる。麺類の調理は注文から90秒以内に完成。客が多いとAIが判断すれば20~30秒で提供する。スマホのアプリを使えば事前に注文することもできる。7月下旬に営業開始以来、1日に200人が訪れている。

 AI食堂は、IoT(モノのインターネット)やAIを活用した食事サービスを提供する企業、上海熙香芸享電子商務が運営。同社の李明(Li Ming)最高経営責任者(CEO)は「従来の食堂では、1人の従業員が対応できる食事は35~100人分。AI食堂は2000人分を対応できます」と説明する。AI食堂は市が導入を図り、現在は同社から賃料を取っていない。

 市役所の支所にあたる虹橋街道事務所の趙厚曽(Zhao Houceng)副所長は「虹橋社区は高齢の住民が多い。油や塩の摂取量や栄養をAIがコントロールし、高齢者にヘルシーで必要な栄養素を取り入れた食事を提供できる」と話す。

 上海市は昨年から「朝食プロジェクト3か年計画」をスタート。キッチンカーなどを含め朝食を取れる店舗を拡大し、今年半ばまでに約1500店舗の新設を後押しした。中国では共働きが常識で出勤時間が朝8時という職場も多く、朝食も家族で外食することが当たり前となっている。ただ、都市開発が進んで飲食店が不足する地域もあり、高齢者が多いエリアでは健康を重視した食事が求められるようになっている。上海市の朝食プロジェクトはそうしたニーズに対応する試みで、AI食堂もその一環だ。中国では少子高齢化が進み、健康志向も高まっている。人手不足の解消や市民の健康維持というニーズ対応するため、AI食堂は今後、全国に広がっていきそうだ。(c)東方新報/AFPBB News