【8月19日 AFP】米国の原子物理学者チームが17日、サッカー場3面分の大きさのレーザー装置を用いて、核融合から大量のエネルギーを発生させることに成功したと発表した。新たなクリーンエネルギー源開発への希望をもたらし得る成果だという。

 研究チームは、巨大な装置内に配置された200列近いレーザー光線を微小な1点に集中させ、過去の実験の8倍以上に達する爆発的なエネルギーを生成した。

 このエネルギーの持続時間は100兆分の1秒と、ごく短時間にすぎないが、核融合点火という至高の目標に科学者らを近づけた。それは、エネルギーの生成量が使用量を上回る瞬間だ。

「この結果は、慣性核融合研究にとって歴史的な前進です」と、米ローレンス・リバモア国立研究所(Lawrence Livermore National Laboratory)のキム・ブディル(Kim Budil)所長は話す。同研究所は、今月の実験が行われた米カリフォルニア州にある国立点火施設(NIF)を運用している。

 廃棄物がほとんど発生せず、温室効果ガスも全く排出しない核融合が、未来のエネルギー源となる可能性があると考える科学者もいる。

 核融合と核分裂は別物だ。核分裂は原子力発電所で現在利用されている技術で、重い原子核を分裂させてエネルギーを放出させる。

 一方、核融合の過程では、二つの軽い原子核を「融合」させ、一つの重い原子核を生成する。

 今回の実験では、二つの水素同位体を使ってヘリウムを生じさせた。これは太陽などの恒星の内部で起きている核融合反応だ。

 英インペリアル・カレッジ・ロンドン(Imperial College London)の核融合分野の研究センターで共同所長を務めるスティーブン・ローズ(Steven Rose)教授は「これは慣性核融合研究が始まった1972年以降で、最も大きな進歩だ」と称賛した。

 だが、同じく共同所長のジェレミー・チッテンデン(Jeremy Chittenden)氏は、これを利用可能なエネルギー源とするのは一筋縄ではいかないと指摘する。

「今回の構想を再生可能な電力源に変えることは、長期の過程となる可能性が高く、重大な技術的課題を克服する必要があります」とチッテンデン氏は述べた。(c)AFP