【9月19日 AFP】忍耐と繊細さが求められる動物の剥製作りはぜいたくなことで、いつもできるわけではない──パキスタンの剥製師ジャハンギール・カーン・ジャドゥーン(Jahangir Khan Jadoon)さんは、ペットが死んで悲しみに暮れる飼い主が来るとこう話す。

「感情的になった飼い主が、目に涙を浮かべながら死んだペットを持ってきて、『この子がいなければ一日たりとも生きていけない』と訴える」と、東部の都市ラホール(Lahore)近郊の工房で、剥製になったヒョウやシカ、オウム、ネコに囲まれながらジャドゥーンさんはAFPに語った。

 自分の作品は芸術であるとともに、飼い主たちの苦痛を和らげるものとなっているという。

 ジャドゥーンさんの工房には、珍しいヒョウや、国内の動物園で何十年も飼われていたヒクイドリなど、長年さまざまな動物が持ち込まれてきた。

「家族代々受け継がれてきた技だ。ラホールの動物園で飼われていたシカのため、祖父が1918年にこの仕事を始めた」と話す。裕福な家の飾りにしかならないような動物の剥製も作っているという。

 パキスタンのエリート層の間で、富と権力の象徴として特にネコ科の大型動物を風変わりなペットにする風潮が広まっており、ジャドゥーンさんの仕事もその影響を受けている。

「大抵の人はネコやイヌ、オウムやクジャクをペットにする。しかし、近ごろではライオンを育てるのがはやっている」

 ペットを剥製にすることで飼い主の気持ちは浄化されるかもしれないが、悲しみを癒やすとは限らない。

 ハーフィズ・ムハンマド・ファヒム(Hafiz Mohammad Fahim)さんは、子どもたちが7年間かわいがっていたペットのクジャクが突然死んだため、剥製にしようと決めた。

 子どもたちと触れ合うことはできなくなったものの、クジャクは今や「思い出」として残っている。

「子どもたちはクジャクに愛着を持っている」とファヒムさんは話した。「今では、なんで動かないのと悲しそうに聞いてくる」 (c)AFP/Sajjad TARAKZAI