【8月17日 AFP】ポーランドの上級裁判所は16日、ホロコースト(Holocaust、ユダヤ人大量虐殺)に関する研究書の記述が名誉毀損(きそん)に当たるかどうかが争われた訴訟の控訴審で、一審判決を覆し、名誉毀損に当たらないと判断した。今回の訴訟は、第2次世界大戦(World War II)時のポーランドの歴史研究の自由に疑問を投げかけるものとして注目されている。

 歴史家のバルバラ・エンゲルキング(Barbara Engelking)氏とヤン・グラボウスキ(Jan Grabowski)氏が共同編さんした「ナイト・ウィズアウト・エンド(Night Without End、終わりのない夜)」は、ナチス・ドイツ(Nazi)占領下で行われていたユダヤ人虐殺にポーランド人カトリック教徒が加担していたとする複数の事例を収めている。

 この本について、戦時中にポーランド北東部の村マリノボ(Malinowo)の村長を務めたエドバルト・マリノフスキ(Edward Malinowski)氏のめいが、2人を名誉毀損で訴えた。

 本では、ドイツ兵によるユダヤ人大量虐殺に村長が関与した可能性を示唆しているが、めいは、村長は実際にはユダヤ人を助けたと主張している。

 下級裁判所は今年2月、エンゲルキング氏とグラボウスキ氏の主張は「不正確」だとして、両氏に原告への謝罪を命じた。

 上級裁判所の裁判官は、今回の訴訟は「科学的研究の自由と表現の自由に対する受け入れがたい違反」だと指摘。「法廷は歴史的議論をする場としてはふさわしくない」と述べた。

 首都ワルシャワに拠点を置く、めいを支援する団体は、最高裁判所に上訴する方針を示した。

 批評家らは、愛国主義的政府が歴史を白紙に戻し、ポーランド人がナチス・ドイツに加担していた事例についての学術的な調査を阻止しようとしていると批判している。(c)AFP