【8月19日 東方新報】中国でもここ数年、スマートフォンで漫画を読む習慣が広まっている。2014年末に誕生した漫画プラットフォーム「快看(Kuaikan)」は、現在では登録ユーザー数が2億人を超える。創業者は28歳の女性、陳安妮(Chen Anni)最高経営責任者(CEO)。「中国漫画を世界に広めたい」と漫画家育成に力を入れている。

 陳CEOは22歳の時に学生仲間と共に、「快看」の前身「快看漫画」を設立。中国ではアニメは日本と同様に人気だが、漫画の雑誌や単行本はほとんど出版されていない。快看漫画は調達した資金から5億元(約84億円)を投入し、漫画家の医療保険や健康診断などの福利厚生を負担。安心して創作に取り組む環境を提供した。作品はスマホで縦にスクロールして読むのを前提に描かれ、全ページオールカラーの作品が多い。コンテンツを増やすにつれてユーザーも増加。アクティブユーザーは4000万人を超え、漫画プラットフォーム市場の50%以上を占める。ユーザーの85%は25歳以下という。

 中国の漫画プラットフォームの人気上位作品のほとんどは快看の独占配信コンテンツが占めている。快看が漫画家にこれまで支払った原稿料は累計で10億元(約169億円)を超える。漫画家の平均月収は5万3600元(約90万円)で、トップクラスの年収は500万元(約8433万円)に達している。

「今の問題は、競争相手が多すぎるのではなく、参加者が少なすぎること。日本の漫画業界に比べて中国はまだまだ漫画家の育成ができていない」。漫画家とコンテンツが少ないという陳CEOは最近、「双十億計画」を発表。今後3年間で漫画家の育成に10億元を投入し、さらに10億元を投資して他の企業と連携して新たなコミックシリーズの制作に乗り出す。

 また、スマホ画面を指でスクロールしなくとも漫画のコマがスライドしていく「コミックドラマ」を新たに始めることを表明。陳CEOは「ユーザーは両手を自由に使いながら漫画を読むことができる。テンポよく1話3分を目安にする」と説明する。青春・学園ドラマ、シティーロマンス、純愛ストーリー、サスペンス、冒険活劇、癒やし系、歴史ロマンなど多彩なジャンルで3000作品を提供する予定だ。

 快看は今年に入り、中国漫画を世界に送る「コロンブス計画」をスタート。既に12言語に翻訳され、世界の70のプラットフォームで配信している。「漫画家を尊敬される職業にしたい。そして中国漫画を世界に広めたい」。陳CEOのまなざしは、未来に、世界に向いている。(c)東方新報/AFPBB News