【8月15日 AFP】アフガニスタン各地で、政府軍は旧支配勢力タリバン(Taliban)にやすやすと投降している。タリバンは米国が政府軍に供与した武器を手に入れ、勢力拡大を加速している。

 ジョー・バイデン(Joe Biden)米大統領は米軍を撤退させ、タリバンとの戦いをアフガン政府軍にゆだねる決断を正当化する際、「われわれはアフガンのパートナーにすべてのツールを提供した…強調しておきたい。すべてのツールだ」と述べていた。

 しかし、政府軍の士気は極めて低く、数万人の兵士が武器を捨て、その武器がタリバンの手に渡っている。

 タリバンのソーシャルメディアには、戦闘員が武器庫から武器を奪う動画が多数投稿されている。こうした武器の大部分は、欧米諸国が供与したものだ。

 北部クンドゥズ(Kunduz)で政府軍兵士が投降する映像には、重火器や迫撃砲を搭載した軍用車両がやすやすとタリバンの手に渡っている場面が映っていた。

 西部のファラー(Farah)では、タリバンの戦闘員らが政府の情報機関の紋章が付いた車に乗って巡回していた。

 英国を拠点に世界の武器の流れを追跡している調査会社、紛争兵器研究所(Conflict Armament Research)のジャスティン・フライシュナー(Justine Fleischner)氏がAFPに語ったところによると、米軍は撤退時、「最新式の」装備を持ち去っており、タリバンの手に渡っているのは「車両、軍用車両、小火器、軽火器、弾薬」だという。

 また、2001年に米軍特殊部隊を率いてタリバンを打倒したジェイソン・アメリン(Jason Amerine)氏は、「米国は、武器や資材がタリバンの手に渡ることを想定して、アフガン政府軍の装備を調えていた」とAFPに語った。「現在起きている危機は、調達決定を行う際に想定された最悪のシナリオだった」

 中東では過去にも同じことが起きた。

 イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」は米軍がイラクから撤退した後、北部モスル(Mosul)を制圧し、米国が供与した銃や軍用車両を奪った。ISはそうした武器を使い、イラクとシリアにまたがる「カリフ制国家」を樹立した。

 タリバンに制圧されたアフガンの各都市ではモスルと同じように、戦闘員が敵から奪った弾薬などと記念撮影をしている。

 元米中央情報局(CIA)のテロ対策専門家アキ・ペリッツ(Aki Peritz)氏は、「撤退が敗走に変わりつつある」と指摘している。 (c)AFP/David Fox with Jack Moore in Hong Kong