【8月13日 AFP】シンガポールにある下水処理場の地下深くで、巨大ポンプがブンブンと音を立て、下水を清潔な飲用水に変え、海洋汚染を軽減している。

 小さな島国シンガポールには天然の水源がほとんどなく、長年、主に隣国マレーシアからの輸入に頼っている。

 政府は水自給率を高めるため、トンネルやハイテク処理場のネットワークなどで構成する高度な下水処理システムを開発してきた。

 水道当局によると、国内の水需要に下水再生水が占める割合は現在40%で、2060年までには55%に増加すると予想されている。

 再生水の大部分は工業用だが、一部は人口570万人のシンガポールの貯水池に供給され、飲料水となっている。

 海に放出される処理済み水はわずかで、海洋汚染の軽減にも役立っている。対照的に、国連(UN)の推計によると世界の廃水の80%は、処理や再利用されずに生態系に流されている。

 公益事業庁(PUB)の水再生部門の技術主任、ロー・ペイ・チン(Low Pei Chin)氏はAFPに対し、「シンガポールは天然資源に乏しく、スペースにも限りがあることから、水源を探り、供給を拡大する方法を常に模索している」と述べた。

「一滴残らず回収」し「無限に再利用する」ことが、主戦略の一つになっているという。シンガポールの水資源確保の重要戦略にはこの他、輸入、貯水池の活用、海水の淡水化がある。

 下水処理システムの中核となるのが、東海岸にあるチャンギ水再生プラント(Changi Water Reclamation Plant)だ。

 シンガポールでは土地が限られているため、施設の一部は地下にあり、地下25階の深さの場所もある。再利用される廃水は、下水道につながる48キロの長さの巨大トンネルを通って流れ込む。

 敷地内にはスチールパイプ、管、タンク、ろ過システムや機器類が迷路のように張り巡らされている。1日の処理能力は9億リットルで、オリンピックサイズ・プールを1年間、24時間おきに満たすことができる量に相当する。

 再生水「ニューウォーター(NEWater)」は、主に高品質な水を必要とするマイクロチップ製造工場やビルの冷却システムに使用されている。

 だが、一部は、乾期に複数の人工貯水池に補給されている。この水はさらに処理され、上水道に供給される。

 シンガポールが水自給率向上を目指す理由の一つに、歴史的に複雑な関係にあるマレーシアからの輸入が重要な水源となっていることがある。

 シンガポールは1965年にマレーシア連邦から短期間で追い出されており、過去には水の供給をめぐり何度か対立したこともある。

 7月27日撮影。(c)AFP/Martin Abbugao