■驚異的能力

 黄色がかったスポンジ状の塊のモジホコリには、口や足、脳がない。

 このように不利に見える状況にもかかわらず、モジホコリは摂食し、成長し、非常にゆっくりとではあるが移動し、驚くべき学習能力を持っている。

 また乾燥状態に置かれると、モジホコリは「菌核」と呼ばれる休眠状態に入ることができる。

 今回、ISSに送られたのは、4個の菌核だ。菌核1個の大きさは、平均的な小指の爪程度だ。

 9月に再び水分を与えれば、菌核はペトリ皿のベッドの中で休眠から目覚めるはずだ。

 4個のサンプルは、科学者らが「LU352」と命名した共通の「ブロブ親細胞」に由来する。これを二つのグループに分け、一方には餌を与えず、もう一方には餌としてオートミールを与える実験が計画されている。

 目的は、モジホコリに対する無重力状態の影響を観察することだ。

 一方、地上では、同じLU352株から切り取った実験サンプルが、フランスにある大学など約4500校に配布される。

「35万人以上の学生がブロブに『触れる』予定です」と、CNESの教育事業担当者は話す。今月末には、それぞれ3~5個の菌核が入った実験キットが教師らの元に届く。

 宇宙空間で菌核を目覚めさせるタイミングに合わせて、地上の菌核も乾燥から戻される。

 その後、宇宙サンプルと地上サンプルの適応の仕方の違いを比較する観察が開始される。これにより、生命体の基本構成要素をめぐる根本的な問題の解明に光が投じられるかもしれない。(c)AFP/Juliette COLLEN