【8月15日 AFP】アイスランド西方沖、ブレイザフィヨルズル湾(Breidafjordur Bay)に浮かぶ離島で1000年前から行われてきた希少なダウン(羽毛)の採取シーズンがやってきた。

 アイダーダウンと呼ばれるアイダーダック(ケワタガモ)の綿羽は手作業で集められる。1キロ当たり数十万円で取引され、最高級の掛け布団やキルトに使われる。

 北極圏を生息地とするアイダーダックは5月ごろから、概して人口がまばらなアイスランド沿岸部に来て巣を作る。一帯には、ひなに餌として与える海藻がある。

 そしてアイダーダックは軽くて、地球上で最も暖かい天然繊維の一つという宝物を残していく。

 毎年夏になると400人近い農民が、岩のくぼみや砂地、背の高い草の合間などを丁寧に探し、このカモが残した薄灰色の羽毛を拾い集める。一か所で集められるのはほんのひと固まりだ。

 アイダーダウンを輸出している「キングアイダー(King Eider)」代表のエルラ・フリズリクスドッティル(Erla Fridriksdottir)さんは、巣の中に「卵があるときは、羽毛は一部しか採取しない。アイダーダックが去った後の巣からは、すべての羽毛を集めます」とAFPに語った。

■1キロで約60個の巣

 マガモに似ているがやや大きい雌は、卵を寒さから守るために、胸の綿羽を巣に敷き詰める。

 1キロのアイダーダウンを集めるには、約60個の巣が必要だ。また1枚のキルトを作るには、品質によって600~1600グラムのダウンが使われる。

 世界全体で採取されるアイダーダウンは年間4トン足らず。その4分の3はアイスランド産だ。

 アイスランドのアイダーダウン採取は、ノルウェーから来たバイキングが定住した9世紀末にさかのぼると言われている。

 1847年以降、アイスランドではアイダーダックの捕獲とその卵の採取が禁止され、完全に保護されている。