【8月10日 AFP】ネパール政府の厳格な自然保護政策の適用により、先住民が暴行や殺害などの人権侵害にさらされている。国際人権団体アムネスティ・インターナショナル(Amnesty International)とネパールの人権団体が9日、「世界の先住民の国際デー(International Day of the World's Indigenous Peoples)」に合わせて報告書を発表した。

 ヒマラヤ(Himalaya)の国、ネパールは、国土のおよそ4分の1が保護区域に指定されており、特にトラとサイの保全については国際的に成功例として評価されている。

 しかし、報告書は、ネパール政府が先住民を先祖代々の土地から「強制退去させている」と指摘している。

 アムネスティのディヌーシカ・ディサナヤケ(Dinushika Dissanayake)南アジア局長代理は、自然保護の取り組みは、「何世代にもわたり保護区域で暮らし、土地を頼ってきた先住民の大きな犠牲によってもたらされた」と述べた。

 政府は、1970年代から「伝統的な食物や薬草、その他の資源への(先住民の)アクセス権を大幅に制限する」という方法で自然保護を行ってきたと、ディサナヤケ氏は指摘している。

「こうした政策を高圧的に適用することが、暴行や虐待、殺人といった多くの事例につながった」

 ネパール国立公園・野生生物保護局(DNPWC)は、報告書を読んでいないとした上で、政府は法律と先住民の権利の衝突を「最小限」に抑えようとしていると説明した。

 報告書は昨年7月、チトワン国立公園(Chitwan National Park)で軍関係者らに殴打された後に死亡したとされるラージ・クマール・チェパン(Raj Kumar Chepang)さん(26)についても触れている。

 チトワンの森に何世代にもわたり住んできた先住民チェパン(Chepang)のラージ・クマールさんは、仲間6人とカタツムリを採集していた時、軍関係者と遭遇し、殴られたとみられる。(c)AFP