【8月10日 AFP】冷戦(Cold War)時代を思わせるような五輪期間中の亡命で、世界中からの視線を集めたベラルーシ陸上代表、クリスツィナ・ツィマノウスカヤ(Krystsina Tsimanouskaya)選手(24)が9日、AFPのインタビューに応じ、自分の後に続いて政権に反対する声を上げるよう同胞に呼び掛けた。

 東京五輪に参加していたツィマノウスカヤ選手は今月1日、自国のコーチ陣を公に批判したことで帰国を命じられたと訴え、日本の警察当局に保護を要請。欧州連合(EU)加盟国のポーランドに人道ビザ(査証)を発給され、在日ポーランド大使館に身を寄せた後、ポーランドの外交当局の保護を受けて東京からオーストリア・ウィーン経由でワルシャワに到着した。

 9日は、不正が指摘されているベラルーシ大統領選からちょうど1年の節目の日。インタビューは、ベラルーシのアスリートに対する政治的制裁に反対する団体「ベラルーシ・スポーツ連帯基金(BSSF)」のワルシャワ事務所で行われた。

■帰国するのはベラルーシが「自由な国になってから」

 ベラルーシは「国民にとって、もはや安全な国ではない」とツィマノウスカヤ選手は話す。

「人々はデモに参加するのも怖がっている。殴られるか、刑務所行きになるのが怖いから」とし、「祖国には自由な国になってほしい。すべての国民が言論の自由を得て、誰もが普通の生活を送ることができ、恐怖心を持たずに済むようになってほしい」と続ける。

 落ち着いてはいるが緊張している面持ちで、いつかは祖国の家族の元に帰りたいが、それはベラルーシが「安全で自由な国になってから」だと言うツィマノウスカヤ選手。

 それは、アレクサンドル・ルカシェンコ(Alexander Lukashenko)大統領が権力の座を降りた時ということかと質問すると、「たぶん、彼がいる限り自由な国にはなれないと思う」と答えた。

 ツィマノウスカヤ選手は、帰国を命じられて空港に向かう途中、ベラルーシに住んでいる祖母から電話があり、それが警察に保護を求める決め手になったと会見で明かしている。「電話をかけてきた祖母に、ベラルーシに戻ってはだめ、あらゆる手を尽くして戻らないようにしなさいと言われた」

 帰国すれば、「精神科病院か刑務所」に入れられるのではないかと不安に駆られたという。

 ルカシェンコ大統領が9日の会見で、ツィマノウスカヤ選手はポーランド政府によって「操られている」と主張したことについては「事実無根」だと否定。今回の行動は前もって計画していたものではなく、「土壇場で自分から助けを求めた」と説明した。