【8月10日 People’s Daily】中国本土最南端に位置する広東省(Guangdong)湛江市(Zhanjiang)徐聞県(Xuwen)はパイナップル栽培で100年近い歴史を誇る中国最大のパイナップル生産地だ。この徐聞産パイナップルがいま、全国的に大人気となっている。「パイナップルの海」「広東は全国に徐聞産パイナップルをお勧めする」などのPR用ショート動画がインターネット上でバズり、閲覧回数は数十億回を記録している。連休になると徐聞県を訪れる観光客が増え、できばえの良いパイナップルの値段は1キロ3元(約51円)を超えるようになった。

 わずか3年前、徐聞県のパイナップルは低迷していた。2018年は大豊作となった分、価格が下落し、伝統ブランド「パリ」の買い取り価格は1キロ0.4元(約5.8円)に落ち込んだ。

 徐聞県のパイナップル栽培面積は35万ムー(約2万3000ヘクタール)で、全国の3分の1を占める。収穫が多ければ市場で売れなくなり、出荷できないパイナップルが腐っていく。こうした悪循環に徐聞県の人々は頭を抱えた。

「産業の弱点こそ、仕事の力点だ」。広東省や湛江市の後押しを受け、徐聞県は産業のデジタル化を図る「パイナップル産業3年計画」を制定した。ビッグデータに基づき生産地と市場の統合を図る戦略で、広東省農業局の専属チームが2019年初めから徐聞県に常駐し、課題の解消に取り組んだ。

 専属チームリーダーの黎小軍(Li Xiaojun)さんは「行政、農家、仕入れ業者、販売業者など多方面のネットワークにより、買い取り価格や販売価格を数値化し、産地と市場の統合に力を入れた」と話す。農産物を販売するインターネットのプラットフォームを通じたPRも行った。パイナップルの評判や売り上げはみるみる上がり、2019年には「パリ」の価格は1キロ1.6~2.2元(約27~37円)に。高品質のものは1キロ2.6元(約44円)となった。

 新型コロナウイルスが猛威を振るった昨年初めも、広東省は「農産物を安心価格で安定供給します」とPRし、インターネットのライブ販売やショート動画プラットフォームでの販売を継続。徐聞産パイナップルの今年第1四半期(1~3月)の販売量は既に昨年の総生産量の半分に達した。成熟前のパイナップルも予約が入るほどの人気となっている。

 ビッグデータの導入により、パイナップルのニーズが高い地域や消費者層を常に把握し、適正価格も分かるようになった。今年は高速鉄道が開通する地域の市場へ出荷を増やしていく。

 農業の近代化が進んでいなかった当時、徐聞県では天候によってパイナップルのできばえも左右された。現在は栽培や保管、出荷作業の標準化により品質は確保され、海外にも輸出されるようになった。

 徐聞県の陳光(Chen Guang)常務副県長は「朝に収穫し昼に出荷、夕方にはスーパーや家庭に届く流れが確立した」と力説する。パイナップルの出荷額はかつての10倍となった。

 今年の春、徐聞県には1000人を超えるバイヤーが訪れた。徐聞県では5万戸の農家で14万6000人がパイナップル栽培に関わっている。パイナップル農家の貯金総額は2019年で9億8000万元(約166億6000万円)に達し、2020年には12億5600万元(約213億5200万円)に増えた。今年の農家の収入は1万2000元(約20万4000円)純増する見込みとなっている。(c)People’s Daily/AFPBB News