【8月9日 AFP】私たちは警告を無視してきた、もはや手遅れだ──国連(UN)の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は9日、地球温暖化の勢いはすさまじく、地球の平均気温は3年前の予測よりも10年早い2030年ごろに、産業革命前と比較して1.5度上昇するとの最新報告書を発表した。

 今秋開催される気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)では、気温上昇を1.5度までに抑制する目標が焦点となる。だが、それを前に発表された衝撃的な報告書は、人類がどれほど積極的に炭素排出量を減らそうとも、2050年前後には1.5度の閾値(いきち)を突破すると指摘している。

 数年かけて作成され195か国の承認を得た報告書は、気候変動が人類の存続にとっての脅威だという山のような証拠に直面してなお優柔不断な各国政府に、容赦ないスポットライトを当てている。

 IPCCは設立から約30年の歴史の中で初めて、ごくわずかな例外を除き、温暖化は全て「人間の活動によって引き起こされているのは疑う余地がない」と結論付けた。報告書には、世界が今後、想定を上回りかねない事態の悪化に備えなければならないことが明確に示されている。

 報告書はまた、たとえ1.5度の目標が奇跡的に達成できたとしても、熱波や豪雨、干ばつなどの異常気象が「観測史上類を見ない」規模で起きる恐れがあるとも結論付けている。

■目に見えない「転換点」

 もう一つの迫り来る脅威は「転換点」だ。気温上昇により、地球の気候システムが不可逆的に変化する目に見えない境界線のことを指す。

 海面を12メートル上昇させる氷床の崩壊や、大気中の2倍の炭素を含有する永久凍土層の融解、アマゾン(Amazon)熱帯雨林のサバンナ化など、将来起こり得る大災害を「無視することはできない」と報告書は警告する。

 一方、二酸化炭素(CO2)を吸収することで人類の気候変動との闘いを支援してくれている森林や土壌、海洋は、「戦闘疲労」といえる状態になりつつある。

 これらの自然は、1960年前後から絶えることなく、人類が排出した全CO2量の56%を吸収してきた。しかし、IPCCによると自然界の炭素吸収能力は限界に達しつつあり、自然が吸収できる人由来のCO2の割合は、2100年以降は減少するとみられる。

 アントニオ・グテレス(Antonio Guterres)国連事務総長はIPCCの報告書について、「人類に対する厳戒警報」だと述べた。(c)AFP/Marlowe HOOD