【8月16日 AFP】欧州では7月、ドイツやベルギーなどを中心に豪雨による洪水が発生し、多くの死者や被害をもたらした。ドイツのワイン産地であるアール渓谷(Ahr valley)でも、地域のワインセラーに置かれたワイン数十万本が水に漬かった。しかし、この泥まみれのワインが今、新たな始まりに向けた希望の象徴となっている。

 泥まみれになったボトルを「ただ捨てるというわけにはいかないと、自らに言い聞かせた」と振り返るのは、これらのワインを「洪水ワイン」として販売する取り組みを考案したリンダ・クレーバー(Linda Kleber)さんだ。

 クレーバーさんがこのアイデアを思いついたのは、洪水の被害に遭った自身が経営するレストランの倉庫からワインを回収していた時だという。

 回収できたワインは、泥が付着したままの状態で届けられる。洪水によって大きな被害をもたらされたことを物語る痕跡だ。

 洪水ワインの売り上げは、5日までに200万ユーロ(約2億6000万円)を超えている。地元のワイン生産者協会の会長を務めるペーター・クリーチェル(Peter Kriechel)さん(38)は、これは「すべてのワイン生産者とサービス業にとっての希望の源となる」と語る。

 クリーチェルさん自身もワイン生産者だ。ワインセラーでは、約20万本のワインが水に漬かったという。

「われわれは長いマラソンレースのスタート地点にいる」とクリーチェルさん。「洪水ワインのような取り組みが(再起への)弾みをつけてくれる」と話した。

 アール渓谷は、険しい斜面で栽培されるピノノワールが有名。この地域の経済は、ワインづくりとそれを取り巻く観光業に大きく依存している。先月の豪雨では、ワインの5~10%が被害を受けた。(c)AFP