【8月5日 People’s Daily】中国では生態系や生物多様性の保護の取り組みが進み、絶滅に瀕(ひん)している動物の個体数が増えている。絶滅の危機にあったパンダは野生の個体数が増加しており、絶滅危惧種から危急種に変わったことは、中国の自然環境が大幅に改善されたことを表している。

 生態環境省自然生態保護局の崔書紅(Cui Shuhong)局長は「最近は生物多様性におけるうれしいニュースが増えている」と話す。青海省(Qinghai)では祁連山脈保護区で国家1級保護動物のハイイロネコの姿が撮影された。ハイイロネコはネコ科の中で最も神秘的な動物の一つとされ、生息数は希少でその活動はほとんど知られていない。

 今年3月には雲南省(Yunnan)の標高2000メートルの山林で、数人のカメラマンが希少鳥類のナナミゾサイチョウ3羽を撮影した。ナナミゾサイチョウは国家1級保護動物で、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」付属書にリストアップされている。最後に撮影されたのは1980年代だった。

 また、野生のパンダやユキヒョウなどの希少動物が各地で見られるようになった。黒竜江省(Heilongjiang)ではアムールトラが農村に現れ、雲南省ではアジアゾウが北上を始めたニュースは多くの注目を集めた。6月には広東省(Guangdong)深セン市(Shenzhen)の大鵬湾海域でニタリクジラが確認された。

 崔局長は「こうした現象は中国で生物多様性の保護と生態系の回復が進展していることを反映している」と分析。自然保護区システムの確立が進み、生態系の保護や野生動物の環境改善が広域に及んでいるという。パンダやチベットカモシカ、シフゾウのような希少動物の生息数が増え、アムールトラやアムールヒョウ、アジアゾウ、トキも増加している。特に野生のパンダは1800頭を超え、絶滅危惧種から危急種へと保護ランクが「格下げ」となった。

 こうした流れの背景について、崔局長は「国の経済・社会開発計画において、生態系の回復を優先事項として展開してきた」と説明。政府の中長期的目標として「中国生物多様性保全戦略・行動計画(2011〜2020)」を掲げ、昨年6月には「重要生態系と主要プロジェクトの保護のための国家基本計画(2021〜2035)を策定。生態系や生物多様性の保全・回復を総合的に強化してきた。

 崔局長はさらに「重要な保全地域を示す生態保護レッドラインを策定した」ことを指摘。レッドライン内の面積は国土の25%となった。また、2019年末段階でさまざまな種類の自然保護区が1万1800か所に上り、国土の18%を占めている。2010年に日本の愛知県で開催された第10回生物多様性条約締約国会議(COP10)で合意された「愛知目標」の「2020年までに17%」を前倒しで達成した。野生動物の繁殖基地や各種の植物園も整備し、希少な動植物の繁殖にも成功している。

「生態系ネットワークの保護と復元でも重大な進展があった」と崔局長。開拓した農地を森林や草原に戻す施策や森林・湿地の保護を推し進め、今年から長江の重点水域では10年間の禁漁が始まった。

 崔局長は「法律の規制や取り締まりも進んでいる」と強調。2019年には全国で野生動物に関する違法行為1万件が判明し、厳格な取り締まりにより違法行為を減少させている。2017~2019年には342か所の国家級自然保護区で違法な採掘や工場建設があり、5038件の問題を是正し、処理率は92%に達している。(c)People’s Daily/AFPBB News