レバノン大爆発から1年 心と体の傷に苦しむ生存者ら
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【8月5日 AFP】レバノンの首都ベイルートの港湾地区で起きた爆発の惨事から1年がたつ今も、シャディ・リズク(Shady Rizk)さん(36)の体からはガラスが摘出されている。最近は膝の裏から長さ1センチほどのガラス片が見つかった。
「ほぼ毎月、新しい破片が見つかります…太ももや脚、そして腕にもまだガラスが刺さっています」。ネットワークエンジニアのリズクさんは爆発の際、全身に破片を浴びた。「数年間は体からガラスが見つかるだろうと、医師には言われています」
昨年の8月4日、ベイルート市内で大爆発が起こり、周辺一帯ががれきと化した。死者200人以上、負傷者6500人。生き延びた人の生活も破壊された。
その後、爆発事件の調査は滞り、世界銀行(World Bank)には現代最悪の経済危機にあると見なされ、レバノンは悪夢のような1年を過ごした。政治家の責任は問われず、急激な貧困化、通貨の暴落、医薬品や燃料など基本物資の不足と抗議デモが続き、多くの生存者が今にも爆発しそうな怒りを抱えている。
爆発が起きた時にいたオフィスビルの下でAFPの取材に応じたリズクさんは、「あの爆発が今も私の中では生々しく残っています」と語った。「8月4日が近づいていますが、誰かが逮捕されることも刑務所に送られることもなく、ただ怒りしかありません」
「だから物を壊したり、抗議するために街へ出て火炎瓶を投げたり、火を付けたり…怒りを吐き出すために何でもしたくなります」
あの日、リズクさんは港を見下ろすバルコニーに立ち、倉庫から立ち上る煙を撮影していた。その時、倉庫で保管されていた肥料用の大量の硝酸アンモニウムが目の前で爆発した。350針以上を縫う大けがをし、視力にも障害が残った。今では夜になるとほとんど目が見えない。
しかし、体の傷より大きな問題があると言う。「トラウマ(心の傷)を抱えていると内側からぼろぼろになってきます」とリズクさんは言う。「心の中でずっと泣いているのです」。リズクさんは現在、カナダへの移住を計画している。