【8月4日 AFP】スイス・アルプス山脈(Swiss Alps)では、温暖化に伴って氷河が融解し、考古学的遺物が発見されることが増えている。登山者がこうした遺物を偶然見つけた際に、場所を記録し、保護に貢献できる携帯アプリが3日、発表された。

 スイス南西部バレー(Valais)州は、携帯アプリ「アイスウオッチャー(IceWatcher)」によって遺物を迅速に収集し、保存することができると説明した。

 バレー州には、アルプス最大のアレッチ(Aletsch)氷河など複数の重要な氷河がある。

 州当局によると、地球温暖化により解けた氷河の中から、数千年前の遺物が見つかることもある。

「低温によりある種の有機物は驚くほど保存状態がいいが、一度氷の覆いがなくなると遺物はすぐに劣化し始め、消滅する可能性がある」

 スイス自然科学アカデミー(SCNAT)によると、スイス・アルプスの氷河は着実に後退しており、昨年だけでも体積の2%が失われた。

 また、スイス連邦工科大学チューリヒ校(ETH Zurich)の2019年の研究によると、産業革命以降の気温上昇を2度未満に抑えるというパリ協定(Paris Agreement)の目標が実現されたとしても、山岳氷河の3分の2が失われる可能性が高い。

 専門家は、今世紀末までに約4000あるアルプスの氷河の95%が消失する可能性があると予測している。

 考古学者らは、気候変動による壊滅的な被害を嘆く一方、数千年前のアルプスでの生活についての理解が飛躍的に深まる機会になっていると考える人も多い。

 バレー州の考古学当局(OCA)は、氷河から露出した遺物を追跡するツールを開発しているが、アルプス全域を監視することは「不可能」だ。このため、スマートフォンを携帯する登山者に助けを求めることにした。

 考古学者でOCA職員のロマン・アンデンマッテン(Romain Andenmatten)氏はAFPに対し、氷河では年間5~10点の遺物が発見されているとみられると述べた。

 アプリのダウンロードは無料で、ホーム画面にはユーザーに発見した物に触らないよう伝えるメッセージが表示される。

 次に、ユーザーは発見した物の種類を選び、大きさが分かるよう発見物を別のものと一緒に写真に収め、発見場所を示す景観写真を撮る。これらの情報は、位置情報と共にOCAに送られる。OCAは発見物の重要性を評価し、収集・保存を行う。

 アプリの利用は現在、OCAに限られているが、アンデンマッテン氏は、将来的には州外でも活用されることを期待している。(c)AFP/Christophe VOGT