【8月4日 AFP】東京五輪バドミントン男子ダブルスで先月、台湾が中国を下して金メダルを獲得したことをきっかけに、中国で愛国主義者らの怒りが再燃しており、不買運動の呼び掛けや、中国企業との広告契約を失うタレントが出る事態にまで発展している。

 東京五輪で台湾はこれまで、金メダル2個、銀メダル4個、銅メダル4個を獲得しており、過去最高の成績を収めている。金メダルの一つは、先月31日に行われたバドミントン男子ダブルス決勝で、李洋(Lee Yang、リー・ヤン)/王斉麟(Wang Chi-lin、ワン・チーリン)組が中国の李俊慧(Junhui Li、リー・ジュンホゥイ)/劉雨辰(Yuchen Liu、リゥ・ユチェン)組を下して獲得したもので、台湾にバドミントンで初めて五輪金メダルをもたらした。

 この試合後、厳しい検閲が行われている中国のインターネット上では、怒りが爆発している。さらに、李がフェイスブック(Facebook)で、勝利を「わが祖国──台湾」にささげると投稿すると、怒りに拍車が掛かった。

 台湾の蔡英文(Tsai Ing-wen)総統も「わが国初のバドミントン金メダルを獲得した」として、台湾ペアを祝福した。

 中国当局は台湾を中国の領土の一部とみなし、「台湾」に対するいかなる国際的承認にも神経をとがらせている。台湾は妥協策として、五輪に「中華台北(Chinese Taipei、チャイニーズ・タイペイ)」として出場しており、表彰式では台湾の旗を掲げることも歌を歌うこともできない。

 標的となっているのはバドミントンのペアだけではない。2人を支持していると見なされれば、誰でも同じ扱いを受ける。

 台湾のバラエティー番組で司会者を務めたこともあるタレントの徐熙●(●は女へんに弟、Dee Hsu、シュー・シーディー)さんはここ数日で、複数の中国企業との契約関係を失った。徐さんがインスタグラム(Instagram)でバドミントンのペアを「国の選手」と呼んだことを受けての契約解除だ。

 そのうちの一つ、上海を拠点にするしょうが茶のブランド、寿全斎(Shou Quan Zhai)は、中国版ツイッター(Twitter)の微博(ウェイボー、Weibo)で、「徐氏との協力関係を直ちにすべて解消する」とし、「国益が何にも勝る。(われわれは)一つの中国の原則を強く支持する」と述べた。

 台湾のポップシンガー、蔡依林(Jolin Tsai、ジョリン・ツァイ)さんも、ソーシャルメディアでバドミントンのペアやその他選手らの写真をシェアしたことで、ネット上で怒りを買った。

 中国は習近平(Xi Jinping)国家主席の下、極めて愛国的な流れが強まっている。不買運動は日常茶飯事で、国営メディアが扇動、支持することもよくある。(c)AFP