【8月3日 AFP】男子テニスのニック・キリオス(Nick Kyrgios、オーストラリア)は、大坂なおみ(Naomi Osaka)がメンタルヘルスの問題を提起するよりもずっと前から、テニスが自分を暗闇に落としていると明かし、ATPツアーでの自分の将来に関して不透明度が増しているとの認識を示した。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的な大流行)で2020年3月にツアーが中断された後、米ワシントンで現在行われているシティ・オープン(Citi Open 2021)がわずか5大会目の出場となるキリオスは、「自分はパートタイムの選手という感じだ」とし、「ツアーに復帰するのは、まだ変な感じがする」と語った。

 これまでツアー通算6勝を挙げ、最後にタイトルを獲得したのは2019年の同大会となっているキリオスは、「もう、あまりツアーを恋しく思わなくなっている。大会に出るたびに、ここに来るのはもう最後になるかもしれないという感じがする」と明かしつつ、「奇妙な感覚だ。今は自分のキャリアを不思議に感じている。だけど、復帰してすごくうれしいし、仲間と会えるのは大好きだ」と語った。

 キリオスは、テニス界では個性の強い選手が認められ始めているとしながらも、ここまでの道のりではプレッシャーに耐える強さが必要だったという。

「自分にはとにかく回復力がある」というキリオスは、「自分ほど精神的に回復力のない人が、ツアーやファンなどから同じくらいの憎悪や人種差別、でたらめを経験したらどうなるだろうか」と語った。

「大坂なおみらが話しているようなメンタル面の問題に、自分も落ち込んだことがある。その経験は、自分の感覚からすれば20倍はひどいものだ」

「自分が話しているのは、このスポーツによって暗闇に落ちる可能性があるということだ。実際にその経験がある。18歳にしてオーストラリアで最も知られた選手の一人になり、メディアにこてんぱんにやられるのは、メンタル的に大変なことだ。簡単ではない」

「今は26歳で、十分に大人になった。全部でたらめだということは分かっている」

 現在は世界ランキング77位につけるキリオスは、無観客であることを主な理由に東京五輪の出場を辞退したが、今大会は100パーセントの収容人数で開催され、大勢のファンが詰め掛けることになる。

「コートの周りからエネルギーを感じる」というキリオスは、「復帰するに当たって、その点がうれしいのは間違いない」と強調し、「今はもう、自分のためにプレーしているのではないと感じている。自分に共感してくれるたくさんの人々のために、今はプレーしている気持ちなんだ」と語った。(c)AFP/Jim SLATER