【8月3日 東方新報】東京五輪の体操男子個人総合で日本の橋本大輝(Daiki Hashimoto)選手が金メダルを獲得したことに中国から非難が殺到したのに対し、銀メダルに終わった中国のエース肖若騰(Xiao Ruoteng)選手が「選手への過度な攻撃はやめてほしい」と呼びかけ、体操日本代表の水鳥寿思(Hisashi Mizutori)監督が感謝の意を述べた。戦いを終えた日中代表が、場外からの「攻撃」を共同で払いのけた。

 7月28日の男子個人総合決勝は、橋本選手が最終種目の鉄棒で肖選手の得点をわずか0.4点上回る逆転を果たした。中国からの批判は、橋本選手が跳馬の着地でマットから足がはみ出たのに高得点だったことや、肖選手が鉄棒で審判員にあいさつをしなかったとして珍しい0.3の減点を受けたことなどに集中。「あまりに不公平な採点」「金メダルが日本に盗まれた」とネット上で批判がわき起こった。国際体操連盟(FIG)は翌29日、橋本選手の跳馬について詳細な減点項目を公開し、「審査は公正だった」と異例の声明を出したが、批判は止まらなかった。

 また、中国ネット大手の騰訊(テンセント、Tencent)がスポーツニュースで「肖若騰が日本の19歳の天才に屈する」と報道すると、ネットユーザーから「日本びいきだ」「頭がおかしいのか」とクレームが相次ぎ、テンセントは「不適切な表現があったことを深くおわびします」と謝罪文を発表する一幕もあった。

 東京五輪では7月26日に行われた卓球の新種目、混合ダブルスで日本の水谷準(Jun Mizutani)・伊藤美誠(Mima Ito)ペアが中国の許昕(Xu Xin)・劉詩雯(Liu Shiwen)ペアに逆転勝ちして金メダルを獲得したことが、中国で大きな衝撃を与えた。中国の卓球チームは2008年の北京五輪から前回のリオデジャネイロ五輪までの3大会すべての種目で金メダルを独占していた。中国メディアは決勝戦敗退を「屈辱」と報じ、国民のストレスが高まっていた。そこに体操男子個人総合の結果が「疑惑の判定」に映り、不満が「暴発」した。

 しかし、その中国からの怒りの前に立ちはだかったのが、肖選手だった。29日午後、自らのSNSで「皆さんには中国選手、中国の体操、そして私を今後も応援してほしい。だが、スポーツ選手を過度に攻撃しないでほしい。スポーツ選手は誰もがすばらしく、目標のために努力している」とメッセージを発した。橋本選手の名は出していないが、彼を擁護する意図は明白だった。

 これを受け日本の水鳥監督は31日、ツイッター(Twitter)で肖選手とのツーショット写真を掲載し、「先ほど練習で一緒だった中国チームの肖若騰選手に、『アスリートを攻撃しないでほしい』という彼の発信が嬉しかったと伝えました。明日は種目別決勝ゆかに出場する予定です!加油!!」と書き込んだ。

 肖選手は28日の個人総合決勝で銀メダルが確定した直後、優勝した橋本選手を拍手でたたえる姿勢も話題を呼んでいた。中国メディアは「日本の金メダリストに対する肖選手の態度は非常に適切で、礼儀正しく、尊敬に値するものだった。自尊心とは対戦相手を見下すことではない。彼は、成熟したプロのアスリートである」とたたえている。(c)東方新報/AFPBB News