【8月3日 AFP】6万年以上前にスペインの洞窟にある鍾乳石(石筍、せきじゅん)に彩色を施していたのは、旧人類のネアンデルタール人で間違いないとする研究論文が2日、発表された。ネアンデルタール人は長年、粗野で野蛮だったと考えられてきた。

 スペイン・アルダレス洞窟(Cueva de Ardales)の鍾乳石で発見された赤褐色の色素は、現生人類(ホモ・サピエンス)の絶滅した近縁種のネアンデルタール人が塗布したものだとする研究論文が2018年に発表されて以来、この問題は先史考古学界で論争を呼んできた。

 年代測定によると、この「芸術作品」は少なくとも6万4800年前のもので、現生人類が欧州大陸にたどり着く前につくられたことを示唆している。

 だが、その後発表された科学論文の中には、鍾乳石の着色は自然物によるもので酸化鉄が流れてできた可能性が高いとするものもあったと、米科学アカデミー紀要(PNAS)で論文を発表した仏ボルドー大学(University of Bordeaux)のフランチェスコ・ディエリコ(Francesco d'Errico)氏はAFPに語った。

 ディエリコ氏らによる最新の分析では、色素の組成と配置は自然の作用と合致せず、飛び散らせたり吹き付けたりする動作を通じて色素が塗布されたことが明らかになった。また、色素の質感が洞窟から採取された自然の試料と一致しないため、色素の出どころが洞窟の外部にあることが示唆された。

 より詳細な年代測定の結果、色素は複数の異なる時期に塗布されており、1万年以上の間隔が空いていることが判明した。

 これは、「ネアンデルタール人が洞窟に色素を塗布する目的で、数千年にわたって何度か来ていたという仮説を裏付けている」とディエリコ氏は言う。

 研究チームは、鍾乳石は「ネアンデルタール人の一部の集団が有した象徴的な制度で重要な役割を果たしていた」が、その象徴が何を意味していたかについては、まだ謎のままだとしている。(c)AFP