【8月9日 AFP】スペイン南部の自然保護区で、イベリアオオヤマネコ(スペインオオヤマネコ)の赤ちゃん4匹が母親の隣ですやすやと寝ている。絶滅の危機にひんしていたこのネコ科の野生動物は、捕獲・飼育活動によって徐々に個体数を増やし始めている。

 エル・アセブチェ(El Acebuche)飼育センターは、欧州有数の大湿原を擁するスペインのドニャーナ国立公園(Donana National Park)にある。同センターは、イベリアオオヤマネコの野生の個体数を増やすために2000年代に設立された飼育施設の一つだ。こうした施設がスペインに4か所、ポルトガルに1か所ある。

 キツネよりやや大きいイベリアオオヤマネコは、白と黒の顎ひげと、耳の先の黒い房毛が特徴だ。

 20世紀初頭、スペインとポルトガルに10万頭前後生息していたが、都市開発や狩猟、交通事故で個体数が急減。最も打撃を与えた要因は、主な餌となるアナウサギが病気で激減したことだ。2002年までに、野生のイベリアオオヤマネコは100頭以下に落ち込んだ。

 この事態を受けて世界自然保護基金(WWF)は、イベリアオオヤマネコが大型ネコ科動物としては1万年前に死に絶えたサーベルタイガー(剣歯虎)以来、初めて絶滅する恐れがあると警鐘を鳴らした。

 しかし政府当局や自然保護団体は、密猟を取り締まり、アナウサギを野生に再導入し、さらに最も重要な方策である飼育活動に力を入れ、何とか減少傾向を覆すことに成功した。

 昨年末時点で、イベリアオオヤマネコの個体数は2か国で1100頭を超えた。そのうちのほとんどがスペイン南部のアンダルシア(Andalusia)地方に集中している。

 保護活動下で飼育されたイベリアオオヤマネコも再導入されている。場所はスペイン中部・南部のカスティーリャラマンチャ(Castilla-La Mancha)、エストレマドゥラ(Extremadura)、ムルシア(Murcia)州、そしてポルトガルだ。