【8月2日 AFP】東京五輪は2日、重量挙げ女子87キロ超級が行われ、ニュージーランドのローレル・ハバード(Laurel Hubbard)がトランスジェンダー選手として史上初の五輪出場を果たした。女子スポーツの公平性を損なうという批判もある中で、包括性の向上を目指している五輪にとって画期的な出来事となった。

 現在43歳のハバードは、出生時の性別が男性で、以前は男性として競技に臨んでいたが、30代で女性に性転換した。そして今回は、国際オリンピック委員会(IOC)がトランスジェンダー選手に求める基準に従い、テストステロン値を下げたことで五輪出場資格を獲得した。競技では、最初のスナッチ3回に失敗して失格となり、早々にメダル争いから脱落したが、それでもハバードは試技を終えると、無観客の会場に向けて手でハートを作るジェスチャーを送った。

 大きなスポットライトを浴びる東京五輪を前に、ハバードはニュージーランドオリンピック委員会(NZOC)を通じて「五輪は私たちの希望と理想、価値観の世界的な祭典。インクルーシブでアクセシブルなスポーツの実現に取り組むIOCを称賛する」と発表したのみで、メディアの取材などには応じずにいたが、競技終了後にはコメントを出し、難しい状況の中で五輪を開催した日本と、自身の五輪出場を実現させた各種統括団体への感謝の言葉を述べた。

「もちろん、私がこの五輪に出場することが物議を醸している事実をまったく知らなかったわけではない。だから、オリンピズムの原則に従う姿勢を明確にし、すべての人のためのインクルーシブでアクセシブルなスポーツを確立してくれたIOCに感謝したい」

「そして、国際ウエイトリフティング連盟(IWF)も並外れていた」

 ハバードはこれまでにも、2017年の世界選手権(2017 IWF Weightlifting Championships)で銀メダルを獲得すると、2018年のコモンウェルスゲームズ(2018 Commonwealth Games、英連邦競技大会)にはトランスジェンダー選手として初出場を果たし、道を切り開いてきた。

 しかし最大の大舞台である五輪にハバードが登場することで、トランスジェンダー選手が女子種目に出場することの是非をめぐる議論も再燃している。これは生命倫理学や人権、科学、公平性、アイデンティティーなどが絡む複雑なテーマだ。

 成長期を男性として過ごしたハバードに対しては、他の女子選手よりも身体的に不当に有利な立場にあるという批判がある。その一方で、ハバードの五輪出場は包括性とトランスジェンダーの人権の勝利だと支持する声もある。(c)AFP