【7月30日 AFP】英ロンドン中心部の交通量の多い交差点に出現した、こんもりとした緑の小山(こやま)は、新型コロナウイルス流行で足が遠のいてしまった観光客を呼び戻す目玉として期待されていた。だが、26日にオープンした「マーブルアーチ・マウンド(Marble Arch Mound)」をめぐっては、大きな失望と冷笑が広がっている。

 19世紀建造の大理石の凱旋(がいせん)門「マーブルアーチ(Marble Arch)」のすぐそばにそびえる、芝生に覆われた高さ25メートルの展望台からは、ロンドン市内がぐるりと一望できるはずだった。ウェストミンスター区議会(Westminster City Council)は27日、「一般公開の準備がまだ整っていない」と認め、入場料4.5ポンド(約700円)の払い戻しに応じている。

 人工の小山のふもとで雨宿りをしていた映像作家のジョージ・スミス(George Smith)さんは、「言うなれば、白いゾウだ。草に覆われた白いゾウと言ったほうがいいかな」とAFPに語った。白いゾウとは、英語で無用の長物を意味する。「どこからともなく現れたこの小山は、ロンドンの景観に全くそぐわない」

「バビロンの空中庭園(Hanging Gardens of Babylon)」を思わせる展望台は、オランダの建築集団MVRDVが手掛けた期間限定のインスタレーションだ。ロンドン地下鉄の駅構内に張られた宣伝ポスターは、「ロンドン最新の屋外アトラクション」とうたっている。

 しかし、教師のジャッキー・ウィッチェル(Jacqui Witchell)さんは、展望台のせいで「美しいマーブルアーチが小さく見える」と述べ、本来ならば開放感のある場所が「閉塞(へいそく)感」に満ちていると苦言を呈した。

 展望台の建設費が200万ポンド(約3億円)だと聞くと、「冗談でしょう」とウィッチェルさんはあきれた。

 英各紙の紙面やソーシャルメディアには、がれきやリサイクルごみの山と評される頂上からの、決して絶景とは言えない眺めを伝える写真が掲載されている。

 マーブルアーチ・マウンドは、繁華街オックスフォードストリート(Oxford Street)を見下ろし、メリルボーン(Marylebone)、メイフェア(Mayfair)、ハイドパーク(Hyde Park)をぐるりと見渡せるよう設計された。だが、マーブルアーチはもちろん、オックスフォードサーカス(Oxford Circus)方面の眺望も生い茂った周囲の木々に遮られてしまっていて、視界の悪さが批判を浴びている。(c)AFP/Callum PATON