【7月28日 AFP】フランスのエマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領は27日、仏領ポリネシアで1966~96年に実施された核実験をめぐり、政府は同域に対して「借り」があると認めた。しかし、謝罪には至らなかった。

 同域を初めて公式訪問したマクロン大統領は、自治体関係者らに向けた演説で「私は責任を受け入れる、そしてあなた方と同様、真実と透明性を求める」と述べ、核実験の被害者らはより良い賠償を受けてしかるべきだとの考えを示した。

 さらに「国家は仏領ポリネシアに借りがある。この借りは、特に1966~74年に行われたこれらの実験から生じている」と話した。

 フランスが核兵器を開発していた1966~96年に行われた実験は禍根を残し、現地住民の命を軽視する人種差別的で植民地主義的な姿勢の表れと受け止められている。

 今年3月には仏調査報道機関ディスクローズ(Disclose)が、機密解除された軍の文書を分析し、同域の放射線の影響は当局発表よりもはるかに深刻だったとする報告書を公表。これを受けて政府関係者らは今月に入り、隠蔽(いんぺい)はなかったと否定していた。

 マクロン氏は演説の中で、現地住民の感情に配慮を示し、実験を仏本土ではなく同域で行ったのは太平洋のはるか遠い場所だからだと認めた。それでもなお、フランスが戦後、仏領ポリネシアの防衛にも用いられる核兵器獲得を目指したことを「完全に」支持すると明言した。

 大統領の4日間の訪問に先立ち、100以上の島から成る同域の住民は、マクロン氏からの謝罪と、被害者らに対する賠償の発表に期待を示していた。

 現地では、白血病やリンパ腫、がんを発症する人が後を絶たない。ディスクローズによると、汚染の影響を受けた人は10万人を超える恐れがある一方、1996年の実験終了後、賠償を受けたのは63人にとどまっている。(c)AFP