【7月27日 AFP】米民間宇宙開発企業ブルー・オリジン(Blue Origin)の創業者で富豪のジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)氏は26日、米航空宇宙局(NASA)に対し、月面着陸船の開発について20億ドル(約2200億円)の値引きを提案した。

 NASAは4月、有人月面探査計画「アルテミス(Artemis)」で使用する着陸船「有人着陸システム(HLS)」の建造を、イーロン・マスク(Elon Musk)氏率いるスペースX(SpaceX)に委託すると発表した。契約規模は29億ドル(約3200億円)。

 これに対し、ライバルのブルー・オリジンと米航空宇宙・防衛企業ダイネティクス(Dynetics)が抗議。現在、米政府監査院(GAO)の裁定を待っている。

 米国はアルテミス計画で2024年までに月面探査を再開し、2030年代の有人火星探査にその教訓を生かすとしている。

 ベゾス氏は、NASAのビル・ネルソン(Bill Nelson)長官に宛てた公開書簡で、HLSの開発企業選定でNASAがこれまでの慣習を破り、2社を競争させるのではなく1社を選定する理由となった「資金不足を解消する」申し出だとアピールしている。

 さらに、値引きは開発費支払いの「繰り延べではなく、完全な放棄だ」と強調。地球軌道での試験もブルー・オリジンが自前で行うとも述べた。

 ベゾス氏は、「NASAが技術的なリスクを緩和し、予算の制約を解決し、アルテミス計画をより競争力が高く信頼でき、持続可能なものに戻すため、われわれは協力する用意がある」と書簡を締めくくった。

 HLS開発受注で指名を逃して以来、ブルー・オリジンは決定を覆すために必死のロビー活動を行っており、米上院ではHLS開発の追加予算100億ドル(約1兆1000億円)を認める法案が可決された。

 しかし、一部から「ベゾス救済法案」と批判される同法案は、いまだ下院で審議中だ。(c)AFP