【7月26日 AFP】チュニジアのカイス・サイード(Kais Saied)大統領は25日、議会を停止し、ヒシャム・メシシ(Hichem Mechichi)首相を解任すると発表した。与党アンナハダ(Ennahdha)は「クーデター」だと非難している。

 首都チュニスの議会前では26日、議長を務めるアンナハダのラシェド・ガンヌーシ(Rached Ghannouchi)党首が議会内への立ち入りを軍に阻止され、抗議の座り込みを展開している。

 サイード氏の発表に先立ち、首都チュニスや中部ガフサ(Gafsa)、ケルアン(Kairouan)、モナスティル(Monastir)、スース(Sousse)、トズール(Tozeur)など国内複数の都市では25日、政府の失策や新型コロナウイルス感染の拡大を批判し、アンナハダとメシシ首相に抗議する大規模なデモが行われていた。

 サイード氏は、新首相を任命し、新政府の「助けを受けながら」自らが行政権を継承すると述べた。また、国民代表議会の議員免責特権を剥奪することも発表した。

 チュニジアの憲法では大統領に議会を解散させる権限はないが、サイード氏は、第80条で「差し迫った危険」がある場合に議会を停止する権限を大統領に認めていると主張している。

 サイード氏は2019年の大統領就任以来、メシシ、ガンヌーシ両氏と対立状態にあった。その結果、閣僚の任命が滞るなど、経済・社会問題対策に政府が集中できない状況が続いていた。

 イスラム主義政党のアンナハダは、「サイード氏の行いは革命と憲法に対するクーデターだ。アンナハダの党員とチュニジア国民は革命を擁護する」との抗議声明をフェイスブック(Facebook)に投稿した。

■市民の反応は…「真の為政者」「新たな独裁者」

 サイード氏が大統領府で緊急会議を開いた後、議会の停止を発表すると、街中には車のクラクションや花火の音が鳴り響いた。

 チュニスでは、新型コロナ対策の夜間外出禁止令を無視して多くの人々が路上に繰り出した。30代の女性は発表を喜び、「勇気ある決断」だと大統領をたたえた。

 中部ガフサでAFPの取材に応じた男性(49)も、国民が何を望んでいるかを大統領は理解してくれたと述べ、「真の為政者であることを証明した」と続けた。

 だが、冷めた目でそれを見ていた別の40代男性は、「この愚か者たちは、新たな独裁者の誕生を祝っている」と語った。

 2011年の「アラブの春(Arab Spring)」唯一の成功例とされるチュニジアだが、革命後の10年間で九つの政府が誕生し、うち幾つかは数か月で倒れており、低迷する経済や貧弱な公共サービスの立て直しに必要な改革の妨げとなっている。政治対立の影響は新型コロナ対策にも及び、これまでに1万8000人以上が死亡。感染者が急増する中、メシシ首相は先週、対応に失敗したとして保健相を解任していた。(c)AFP