■「権利のために闘うことに意味はある」

 農業労働者に対する搾取の問題は議会でも取り上げられた。シンさんの元雇用主が起訴されたのも、カポラーリを取り締まる法律が2016年に成立したことによる。

 しかし、検査や労働監督官が足りず、法律が十分に運用されていないと労働組合は指摘する。

 社会学者のオミッツォロ氏は、ラティーナ県で農業従事者が虐待を受けている実態を数年かけて調査した。圧倒的にインド人が多いベラファーニア(Bella Farnia)村では、素性を隠して3か月間働いた。

 何度か殺害予告を受け、現在はシンさんと同じく、警察の保護下にある。2019年には、「勇気ある活動」を認められてセルジョ・マッタレッラ(Sergio Mattarella)大統領に爵位を授与された。

 オミッツォロ氏は2016年、イタリアの農業・食品産業労働者連盟(FLAI-CGIL)と共にアグロ・ポンティーノのインド人移民による初のストライキを計画し、労働者らを支えた。

 ストライキ以後、移民労働者の時給は3ユーロ(約390円)以下から5ユーロ(約650円)前後まで上がったが、それでも法定最低賃金の半分に届く程度だ。

 労働条件はいまだ理想からは程遠いとオミッツォロ氏は認める。しかし、抗議を通じてインド人労働者は「権利のために闘うことに意味はある」と考えるようになったと話す。(c)AFP/Alvise ARMELLINI