【7月26日 AFP】インド人の移民労働者バルビア・シン(Balbir Singh)さん(49)がイタリアで家畜の世話をした6年間は、まるで奴隷のような日々だった。

「1日12~13時間働いていました。日曜日もです。休日も休憩もありません」とシンさんはAFPに語り、その過酷さをイタリア語で「マチェッロ(macello、めちゃくちゃ)」と言い表した。

 首都ローマの南にある農村地帯ラティーナ(Latina)県では、シンさんをはじめ、数万人のインド人の移民労働者が暮らしている。

 シンさんが農場主から渡された1か月の給料は、100~150ユーロ(約1万3000円~2万円)。時給にして50円を上回る程度だ。農業従事者の法定最低賃金は時給10ユーロ(約1300円)前後だ。

 シンさんはフェイスブック(Facebook)やメッセージアプリのワッツアップ(WhatsApp)を通じて地元のインド人社会の有力者やイタリア人の人権活動家に助けを求め、2017年3月17日、警察の強制捜査で救出された。

 警察に見つけ出された時のシンさんは、トレーラーハウスに住み、ガスも電気もなく、お湯も出ない生活を送っていた。食べ物は、雇い主の残飯かニワトリや豚の余った餌。家畜を洗うためのホースをシャワー代わりにしていた。

 助けてくれる弁護士が見つかった時は、雇い主に「おまえを殺してやる。穴を掘って埋めてやる」と言われたと話す。「銃を持っていました。この目で見たんです」

 何度か殴られ、身分証明書も取り上げられたという。

 シンさんの元雇い主は現在、労働搾取の罪に問われ、裁判にかけられている。シンさんは報復を恐れ、身を隠して暮らしている。

 極端な例に思えるが、かつて湿原があったアグロ・ポンティーノ(Agro Pontino)と呼ばれるラティーナ県の平野やイタリア各地でも、移民労働者が農場で過酷に搾取されるケースが後を絶たない。

 現代の奴隷制の実態を調査した国連(UN)特別報告者の2018年の推計では、イタリアでは40万人以上の農業労働者が搾取される危険にさらされ、10万人近くが「非人道的な労働条件」に直面している。