【7月22日 AFP】マニキュアを塗った指が触れた窓の外には、どんどん押し寄せている茶色い水が見える──21日、中国のSNSユーザーをがくぜんとさせた絶望的なシーンの一つだ。

 20日夕方、集中豪雨に見舞われた中国中部・河南(Henan)省鄭州(Zhengzhou)市の地下鉄に大量の水が流れ込み、市当局発表で少なくとも12人が死亡、5人が負傷した。

 中国版ツイッター(Twitter)の微博(ウェイボー、Weibo)や地元メディアには、「地下鉄5号線」の恐怖の断片を捉えた映像があふれた。帰宅ラッシュ時の地下鉄は電気が消え、車内は乗客の胸の高さまで浸水。乗客がSNSに投稿した動画は、あたかも最後の証言のようだった。

 動画に映る駅のホームは、泥水の急流と化していた。暗い車内では、水位が不気味に上がる中、困惑や恐怖の表情を浮かべた通勤客が立ち尽くす。子どもを水面の上に、高く持ち上げる親たちの姿もあった。

 車外の水位も上昇し、いつドアが破られてもおかしくない状況に、思わず窓に触れてしまった女性の指。信じられないという思いの表れだろう。

 別の女性はウェイボーに「ドアの隙間から水がどんどん入ってきて、可能な人は全員、座席の上に立った」と投稿。女性は午後5時ごろ帰宅しようと地下鉄に乗っていたところ、市中心部に近い二つの駅の間で止まってしまった。

 またウェイボーでは、避難しようとしたが車両に留まらざるを得なかったという証言もあった。「30分もするうちに車内の水位がどんどん上がって、足首から膝、首まで水に漬かってしまった」。さらに「停電が起きた。その30分後には息をするのも困難になった」

 突然、救助隊が窓ガラスをたたき割った。国営メディアによると、救助隊は乗客を引き上げるために客車の上部も壊したという。

 生還した男性は国営中国中央テレビ(CCTV)にこう語った。「シャツもリュックサックも、捨てられるものは全部捨てました。周りの人たちは手すりにしがみついて、十数人は(トンネルから)出ようと上っていました」 (c)AFP/Beiyi SEOW / Laurie CHEN