【7月24日 AFP】イエス・キリスト(Jesus Christ)が話していたアラム語を現在も使う村がシリアにある。首都ダマスカス北方のマアルーラ(Maalula)村だ。シリア内戦で途絶えた巡礼者を再び迎え入れようと、村ではボランティアたちが通り道の石を片付け、落書きを消す作業に当たっている。

 山間部のけわしい崖に囲まれたマアルーラ村は、キリスト教徒の定住地としては世界最古の一つ。2011年の内戦勃発までは年間数千人が、村の教会や修道院を訪れ、住民たちが話す言葉に耳を傾けていた。ジミー・カーター(Jimmy Carter)元米大統領や、ベネズエラの故ウゴ・チャベス(Hugo Chavez)大統領もここを訪問している。

 しかし内戦が始まると、巡礼者らの姿はほぼ見られなくなった。

 アラム語で「入り口」を意味するこの村には、ある古い言い伝えがある。

 紀元1世紀、婚約していた異教徒から逃れ、家を離れて信仰生活を送ろうとしていた一人の女性がいた。女性は、ローマ兵の追っ手によって山の中の行き止まりに追い込まれてしまったが、そこで祈りをささげると、岩の表面に洞窟へと続く道が開いた。

 その後、洞窟の中で一生を過ごし、病める人たちを神聖な泉の水で癒やし続けたと言われているこの女性は、後に聖テクラ(Saint Taqla)として知られるようになる。付近にはギリシャ正教の聖テクラ修道院がある。

 渓谷の底を走る狭い道では、8月15日の「聖母の被昇天」に向け、夏の暑さの中でボランティアの男性らが働いている。

 男性らは、転がっている大きな石の塊や破片を手押し車でどかし、通路を片付けていく。内戦中に書かれた落書きをぬれた布で消していたヤヒヤさん(29)は額に汗をにじませて、「昔よりきれいにするよ」と話した。