【7月20日 AFP】ベルギー東部の産業地帯の渓谷から水が引き始めると、燃料油と川の泥の悪臭に混じってココアの匂いが漂ってきた。

 ベルギーはかつてない規模の洪水に見舞われ、多くの企業が一時的に休業を余儀なくされた。同国を代表する高級チョコレートブランド「ガレー(Galler)」の工場もその一つだ。

 工場は、リエージュ(Liege)市郊外のショーフォンテーヌ(Chaudfontaine)コミューン(自治体)にあるボースシェブルモン(Vaux-sous-Chevremont)を流れるベドル(Vesdre)川のほとりにある。この工場で生産されるチョコレートは、遠く日本のファンにも届けられている。

 世界のチョコレートの中心地を自任するベルギーで、ガレーは「ゴディバ(GODIVA)」や「レオニダス(Leonidas)」とともに、王室御用達の認定を受けている。

 だが、ドイツ国境に近いかつての炭鉱地域の渓谷は、一週間続いた集中豪雨で洪水に見舞われ、ガレーの工場でも正面の壁の一部が損壊した。

■現状把握の時

 道具や作業台は押し流され、積み重なった。川の水位が通常より1.8メートル上昇したことが、壁に付いた泥水の跡から分かった。

 広報部長のバレリー・シュテフェナト(Valerie Stefenatto)氏(32)は、長靴をはいて電話を手に工場敷地内を歩きながら、「まずは現状をしっかり把握しなければ」と話した。

 原材料の容器はひっくり返ってふたが開き、辺りにはチョコレートの匂いが漂っている。

 ガレーを含め、同国の南部や東部にある企業では、疑問が沸き起こるだろう。気象学者や気候科学者の警告はなぜ無視されたのか。政府はなぜ動かなかったのか。

 川の水位が上昇し始めた14日、ガレーの工場の従業員は土のうを積み上げて生産を打ち切った。だが、翌15日に洪水が発生するとは予測するすべもなかった。

「工場は1976年からここで操業しています。ボースシェブルモンで洪水なんて聞いたこともありません」とシュテフェナト氏はため息をついた。

 だが、運送用トラック1台と10メートルのコンテナは荷積み場に投げ出されている。また、60人の従業員がいつ職場に戻れるのかもまだ分からない。

「(復旧に)どのくらいかかるのかまだ分かりません。1か月か、2か月それとも3か月か。特定の市場に的を絞るかどうかによります。ベルギー市場か欧州市場か」とシュテフェナトさんは語った。(c)AFP/Laetitia DREVET