【7月17日 AFP】仏パリで16日、凱旋(がいせん)門(Arc de Triomphe)を2万5000平方メートル以上の銀色がかった青い布で包む作業が開始された。昨年亡くなったアーティスト、クリスト(Christo)氏をしのんで行われるもので、同氏はプロジェクトの構想を数十年前から温めていた。

 ブルガリア出身で長年パリを拠点としたクリスト氏は、1960年代に近くのアパートに住んでいた頃に、シャンゼリゼ通り(Champs-Elysees)にある凱旋門を布でラッピングする構想を抱いた。

 クリスト氏は、生前さまざまな公共の建築物を布で包むプロジェクトを手掛け、1985年にパリ最古の橋ポンヌフ(Pont Neuf)を包んだ作品や、1995年に独ベルリンの旧ドイツ帝国議会議事堂を包んだ作品などがあるが、凱旋門を包むプロジェクトは実現することなく死去した。

 クリスト氏と、長年創作活動を共に続けた妻の故ジャンヌ・クロード(Jeanne-Claude)氏が進めていた凱旋門のプロジェクトを監督するのは、おいのヴラディミル・ヤバシェフ(Vladimir Javacheff)氏。近代美術館「ポンピドーセンター(Pompidou Centre)」とフランス当局が協力しているが、主催者によると、資金はクリスト氏のスケッチやドローイング、コラージュ作品の売り上げで賄われ、公金は一切使われない。

 夫妻の作品情報を発信しているツイッター(Twitter)の公式アカウントは、「『L'Arc de Triomphe, Wrapped(包まれた凱旋門)』プロジェクトが始まる!」と投稿している。

 クリスト氏は同プロジェクトに関するスケッチや合成写真を残し、凱旋門が「風に吹かれ、光を反射して、生物のようになる。布のひだが揺れ動き、凱旋門の表面は官能的なものになるはずだ」として、「誰もが凱旋門に触ってみたくなるだろう」と語っていた。

 16日からは、ラッピングする際に凱旋門の石造物や彫刻を傷つけないように、足場や保護装置を設置する準備が行われている。(c)AFP/Jean-Louis DE LA VAISSIERE