【8月1日 AFP】急成長を遂げつつあるベジバーガー業界は、人工知能(AI)を使って肉の代替食品を開発している。

 香料メーカーの世界的大手、スイスのフィルメニッヒ(Firmenich)は、牛肉っぽさを再現するには、風味や質感、色に加えて、調理してどう変化するか、口に入れたときどう感じるかも重要だと説明する。

「植物性タンパク質の中から肉に似たタンパク質を見つけ出すには、緻密さが求められます」。ジュネーブ郊外サティニー(Satigny)にあるフィルメニッヒ本社で、フレーバー部門の責任者、エマニュエル・ビュストレン(Emmanuel Butstraen)氏はAFPに語った。

 ビュストレン氏によると、一番難しいのは不快な後味をどうなくすかだ。豆のタンパク質は苦みが出がちで、味蕾(みらい)がすぐに感じ取ってしまうという。

 イノベーション部門のディレクター、ジェローム・バラ(Jerome Barra)氏は、植物由来のタンパク質は青リンゴや梨の風味がかすかにし、豆の後味、渋味、場合によってはぱさつきを感じさせることもあると説明する。

 これらの風味を隠したり別の味で打ち消したりするために、多種多様な成分が使われる。

 コンピューター上のデータベースで風味をつくり出す作業は、「5000鍵のピアノ」で作曲するようなものだとバラ氏は言う。

 だがAIのアルゴリズなら、単に幅広い風味の組み合わせを生み出すだけでなく、消費者の嗜好(しこう)の変化、技術上・法令上の制約も加味することができる。調香師が思い付かないような多様な組み合わせをはじき出すこともあるという。

 フィルメニッヒのジルベール・ゴスティン(Gilbert Ghostine)最高経営責任者(CEO)は「植物由来の食品は、消費における極めて重要な変化です」と語る。

「この傾向は今後、ますます強まるでしょう」と言うゴスティン氏は、中でも最も成長する可能性が大きいのは、肉類と乳製品の代替品だと指摘した。

 金融大手クレディ・スイス(Credit Suisse)の調査によると、世界の肉類・乳製品の代替品市場はすでに140億ドル(約1兆5400億円)に達しており、2030年には1430億ドル(約15兆7000億円)、2050年には1兆4000億ドル(約154兆円)規模に拡大する見通しだ。

 フレキシタリアン(柔軟な菜食主義者)の増加や、食肉生産で排出される温室効果ガスへの懸念から、菜食主義者向けの代替食品市場は急速な成長期を迎えている。(c)AFP/Nathalie OLOF-ORS