【7月15日 People’s Daily】中国陝西省(Shaanxi)楡林市(Yulin)と内モンゴル自治区(Inner Mongolia Autonomous Region)オルドス市(Ordos)の間に位置し、楡林市の面積の56%を占めるムウス(毛烏素)砂漠は、古くから砂嵐が吹く不毛の地として地域の人々を悩ませてきた。

 楡林市の人々は1950年代から70年にわたる植林活動を続け、砂漠の緑化率は93.2%に達している。中でも、中国共産党の最高栄誉「七一勲章」受賞者である石光銀(Shi Guangyin)さんの貢献は大きい。

 石さんは1952年に楡林市定辺県(Dingbian)で生まれたごく普通の農民だ。1984年、個人が砂漠化防止事業を請け負う制度を国が打ち出すと、石さんは楡林市で初めて事業を請け負い、約200ヘクタールの砂漠化を防止する契約を結んだ。

 それから30年以上にわたり、石さんは地元の硬骨漢を率い、約1万5600ヘクタールの砂漠や荒れ地に5300万本を植樹し、ムウス砂漠の南側に約50キロに及ぶ「緑の長城」を造り出した。「砂進人退(砂漠が広がり、人が住めなくなる)」といわれた過酷な環境を根本から改善し、目に見える社会的な効果や経済効果を生み出した。

 石さんは困難に直面している人々への支援も忘れなかった。120万元(約2037万円)以上の資金を調達し、学校2校を建設し、劣悪な環境に住む住民の新しい居住地「生態移民村」をつくり、300世帯以上に恩恵をもたらした。石さんはこれまでに「全国労働模範」や「全国砂漠化対策英雄」、傑出した農家に贈る国連食糧農業機関(FAO)の賞「outstanding farmer」などに選ばれ、地元では「砂漠のおじさん」と親しまれている。

 1984年、石さんは家族を連れて砂漠が広がる村に移住して植林を開始した。その年の成育率は85%程度だったが、1~2年後には90%の苗木が砂にのみ込まれてしまった。石さんは「熱意だけでは砂漠化防止はできない」と考えて定辺県林業局の技術指導者に教えを請い、「障壁砂漠化防止法」などの科学的方法を取り入れ、400ヘクタールの砂漠で80%以上の成育率を達成した。

 2004年末までに石さんが請け負った約1万5600ヘクタールの砂漠・荒れ地は効果的な緑化が進み、樹木や草地のカバー率が90%以上に達した。

 2000年以降、石さんは新たな取り組みを始めた。それまでに植えた樹木は寿命が短く経済的価値が低いことから、モンゴルアカマツを中心とした百数十万本を新たに植樹している。石さんは砂漠化防止の会社を設立し、「砂漠を緑化して開発・利用する」「企業と農家と拠点を結びつける」という発展戦略を打ち出して砂漠化防止とビジネスを一体化させている。1000頭の乳牛を育てる飼育場や牧場、浄水場、月牙湖観光地など10件以上の経済プロジェクトを推進している。石さんの会社は、補助金やビジネスによる利益が年間340万元(約5770万円)以上に達している。(c)People’s Daily/AFPBB News