【7月15日 People’s Daily】中国の有人宇宙船「神舟12号(Shenzhou-12)」は6月17日、中国甘粛省(Gansu)の酒泉衛星発射センターから打ち上げられ、地球の周回軌道に入った。神舟12号に乗った3人の宇宙飛行士は中国の宇宙ステーションのコアモジュール(中核施設)「天和(Tianhe)」に移動し、活動を始めている。

 今回のミッションは中国の宇宙飛行士が初めて宇宙ステーションで活動するもので、有人飛行ミッションとしても5年ぶりとなる。3人の飛行士、聶海勝(Nie Haisheng)氏、劉伯明(Liu Boming)氏、湯洪波(Tang Hongbo)氏は中国メディアの取材に以下のように答えた。

「神舟12号」での任務はどのようなものか? これまでの有人飛行ミッションとの違いは?

 聶海勝氏「第一に、任務の量がとても膨大となります。例えば、われわれはコアモジュールに入室してすぐに居住環境を構築し、さらに船外の宇宙空間で設営やメンテナンス活動をします。(2008年に中国の宇宙飛行士が初めて宇宙遊泳をした)神舟7号と比べて神舟12号の任務は長時間となり、一度の船外活動が6時間前後に及びます。ロボットアームを使う作業も初めてで、その複雑さは想像を超えるものとなるでしょう。第二に、今回の滞在期間は3か月に上ります。健康維持や生活スキル向上のため多くのトレーニングを積み、宇宙での生活にどのように適応していくか考えていかなければなりません。そして第三に、宇宙ステーションでは多くの宇宙実験や技術試験を行うため、時間がタイトということです」

 宇宙ステーションからは随時、電話ができると聞きました。

 聶海勝氏「宇宙ステーションと地上の間でいつでも電話ができます。時間がある時は地上と電話でやりとりし、家族とも話すことができます。私たちは持参したタブレット型パソコンでインターネットにアクセスできますし、船外でもWi-Fiに接続できます」

 3か月の間、どうやって散髪をしますか?

 聶海勝氏「飛行士が互いに散髪する訓練を地上で何度もしてきました。無重力の宇宙空間では髪の毛はバラバラになってしまうので、掃除機のようなもので髪の毛を吸い取ります」

 宇宙飛行士は私物も持ち込めるそうですね。

 湯洪波氏「私は妻や子どもの日常の暮らしをビデオでたくさん撮影しており、任務の合間に見てリラックスします。中学生の息子は非常にユーモアがあって明るくて、私の自慢ですよ」

 重要なミッションのため、どのような訓練をしてきましたか?

 劉伯明氏「最も過酷だったのは水中訓練でした。プールの中で宇宙の無重力環境を再現し、船外活動用の宇宙服に見立てた水中訓練用スーツを着用して訓練しました。水中訓練は基本的に6時間にわたり、信念と忍耐力が必要でした」

 水中訓練の後は、はしを持つこともできなくなるほど疲れると聞きます。どうやって適応できたのでしょうか?

 聶海勝氏「まずは全身を鍛える訓練をして、次に上半身の筋力を強化します。そして水中トレーニングを重ねながら心肺機能や上半身の筋肉を鍛えることで、適応力を高めていきます」

 湯洪波氏「水中トレーニングで体力的な問題は克服できましたが、船外活動用の宇宙服は空間が狭くてとても息苦しく、服を着たらすぐ脱ぎたくなりました。その後、宇宙服の温度を下げると気分が楽になることが分かりました。これまで学んできたメンタルコンディショニング法と合わせて、落ち着けるようになりました。今は船外用宇宙服を着ても快適で、何時間でも違和感なく作業ができます」

 宇宙での生活を想定して行った「閉鎖生活訓練」とはどのようなものですか?

 湯洪波氏「宇宙飛行士が集中力を保って業務を継続できるよう、過酷なトレーニングを通じて飛行士の緊急対応能力をテストし、意思をコントロールする力を磨くのが目的です。例えば、狭い密閉空間で72時間眠らないで作業を続けます。また、業務、生活、廃棄物処理など、宇宙ステーションに入ってからの手順を完全に再現する閉鎖訓練を1か月行いました」

 中国の宇宙ミッションにはどのような変化がありますか?

 聶海勝氏「中国の有人宇宙技術が一歩一歩進むにつれ、ミッションの回数や期間が増え、宇宙飛行士の資質に対する要求も高くなってきています。宇宙での衣食住、労働環境、通信条件、安全の保障などは長年かけてあらゆる面で発展してきました。例えば、私たちの生活空間もどんどん広くなっています。(2003年、中国初の有人軌道飛行に成功した)神舟5号では宇宙飛行士は軌道モジュールに入りませんでしたが、(宇宙ステーション天宮1号とドッキングした)神舟10号では、3人の宇宙飛行士が2部屋で生活しました。今回の宇宙ステーションは3部屋2ホールと空間が大きく広がりました」

「私と費俊竜(Fei Junlong)飛行士が乗り込んだ(2005年の)神舟6号のミッションでは、軌道モジュールの温度が低く、温かい食事を食べることは少なかった。以前は食事メニューのサイクルは3日間でしたが、現在は7日間周期となり、さまざまな食事が食べられるようになりました。これまでは水と酸素は地上から運んできましたが、宇宙ステーションでは3~6か月の長期滞在をするため、最新技術を使って水を再利用できるようになりました」

「宇宙ステーションが建設されれば、次々と多くの宇宙飛行士を迎えることができます。将来的には、海外の宇宙飛行士もファミリーとして迎えて、この宇宙のプラットフォームで多くの科学的研究を行い、全人類のため役立てることも可能になるでしょう」 (c)People’s Daily/AFPBB News