【7月18日 AFP】ポーランドの首都ワルシャワを流れる川沿いの港。貯炭場やごみ捨て場と並んで、鉄でできた帆船が初航海を待っている。ホームレスの人々が力を合わせ、14年以上かけて製作したものだ。

 先月、帆船は「ボグスラブ神父(Father Boguslaw)」号と命名された。船名の由来となったボグスラブ・パレチニ(Boguslaw Paleczny)神父は2006年、ホームレスの人々の社会復帰を促す目的でこの現実離れしたプロジェクトを立ち上げた。

「船にやっと命が宿った」。船長でプロジェクト・リーダーのバルダマル・ジェズニキ(Waldemar Rzeznicki)さんは喜びながら、全長17.8メートルの船のマストに旗を揚げた。「すべての船には、それぞれ違う魂がある。この船は本当にユニークだ」

 プロジェクトに参加する一人、ホームレスのスラボミル・ミカルスキ(Slawomir Michalski)さん(64)は、道具が不足していたことを思えば、いっそう見事な出来栄えに感じると言った。

「クレーンやフォークリフトなど、造船所で通常使う機械はありませんでした」とミカルスキさんは明かす。「あったのは日曜大工用のシンプルな工具だけ。鉄用の切断トーチやハンマー、板金はさみやグラインダーぐらいです」

 マスト用の木材や鉄板、竜骨に使った鉛など、資材の多くは寄付されたもので、古い漁船から取り出したディーゼルモーターはまだ修理が必要だ。

 パレチニ神父は、聖職に就く前に造船技師として働いていた。帆船の完成を見ずして2009年に他界したが、プロジェクトは続いた。

 船の建造に携わったのは、ワルシャワにあるホームレス宿泊所の入居者やボーイスカウト、ボランティアら合計およそ300人。それぞれの参加日数は、2、3日という人から数か月、数年までまちまちだ。

「神父の遺言を全うしました。この仕事はまさに神父の忘れ形見でした」とミカルスキさんは振り返る。