【7月15日 Xinhua News】中国浙江省(Zhejiang)の考古学者がこのほど、同省余姚市(Yuyao)の井頭山(せいとうざん)遺跡で昨年出土した木器2点が中国最古の漆器であることを突き止めた。8千年余り前のものだという。関連論文は考古学誌「Archaeometry」に掲載された。

 同遺跡は省内で初めて見つかった海岸貝塚遺跡で、中国沿海部で地層が最も深く、年代も最古で、内容の充実した海洋文化遺跡として知られる。年代は7800~8300年前で、2020年度の「全国十大考古新発見」にも選ばれている。

 同遺跡の発掘が始まったのは2019年9月で、木器2点は昨年上半期(1~6月)の調査で出土した。いずれも人工的に着色されており、一つは木釘が打たれた木片で、もう一つは表面に黒い皮が付いた楕円の棒だった。

 塗装の材質を明らかにするため、浙江文物考古研究所と浙江大学文物保護研究室が共同で研究を実施した。非破壊赤外分光法(Miro-FTIR)や熱分解分析法(Py-GC/MS)、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)などによる調査を通じ、塗装の成分が漆であり、木器は2点とも漆器であることが分かった。

 浙江文物考古研究所先史研究室の主任で、同遺跡の発掘隊を率いた孫国平(Sun Guoping)研究員は、同遺跡近くの田螺山(でんらさん)遺跡で以前実施した発掘調査で、漆の木が出土したことがあると説明。井頭山遺跡の漆器2点は早期地層の第18層から出土しており、放射性炭素年代測定により約8200年前の地層であることが判明したと述べた。

 井頭山遺跡の近くには、有名な河姆渡(かぼと)遺跡があり、1977年に6千年余り前の朱塗りの椀が出土している。十数年前に同省杭州市(Hangzhou)蕭山(しょうざん)区の跨湖橋(ここきょう)遺跡で実施した発掘調査でも約8千年前の漆塗りの木の弓が見つかった。孫氏は、2点の漆器の年代が判明したことにより中国の漆器の歴史は約8300年前までさかのぼったと語った。

 漆器2点のうち、木片の用途については推測が難しく、丸木舟の残骸や楽器の共鳴箱の可能性があるという。木棒は織物に用いられたと考えられる。いずれも実用的かつ儀礼的な性格を持ち、古代の人々が文化的な暮らしを追求したことを裏付けている。

 孫氏によると、井頭山遺跡で出土した木工道具や櫂(かい)、木製の椀、織物などの各種器物は、中国沿岸部で最も古い文化遺物といえる。中国人が早くから海に適応し、海を利用していたことを示しているという。(c)Xinhua News/AFPBB News