【7月18日 AFP】タイ・バンコクのギャラリーの壁を、数十枚のアニメキャラクターの肖像画が飾っている。絵の下には、その早すぎる死を悼むファン用に花などを手向けるための小さな棚が設置されている。

 お気に入りのアニメや漫画のキャラクターの死を悼みたいと思ったタイ人アーティスト、ジンニパー・ニワーサブット(Jinnipha Nivasabut)さん(22)は、肖像画50枚を制作し、個展「2D Afterlife」で発表した。

 作品の主要コンセプトは、「なぜ架空のキャラクターの死が、実在の人間にこれほどの影響を与えられるのかを掘り下げることだ」と、ジンニパーさんは語る。

 ジンニパーさんはアニメや漫画的な表現を避け、重厚なリアリズムのある油絵でキャラクターを描いた。

「私は、キャラクターたちを本当の人間だと記憶している。家族の一員のようなもので、だから可能な限り本物の人間のように描いた」

 タイでは、日本のアニメや漫画が広く人気で、新型コロナウイルス流行前のバンコクでは、ファン向けのイベントが頻繁に開催され、多数のコスプレーヤーが参加していた。

 ジンニパーさんは、自分の作品を単なるファンアートにはしたくなかったが、同時に自分と原作の多数のファンも参加できるようにしたかったと話す。

 キャラクターの肖像画の下には小さな棚が設置されており、花やタイの典型的な供物である炭酸飲料ファンタ(Fanta)などを置くことができるようになっている。

 大人気の「進撃の巨人(Attack on Titan)」に登場するサシャ・ブラウス(Sasha Braus)の肖像には、食べるのが大好きで、「芋女」と呼ばれたことにちなみイモが一つ供えられていた。

 ギャラリーを訪れたグンニット・アサワウォンカセム(Kullanit Assawawongkasem)さん(19)は、「サシャはイモが好きだと知られているから、誰かが棚に置いてあげた」と話し、サシャが死んだ時、「非常にショックを受けた」と続けた。

 しかし「肖像画、特にサシャのものを見て、悲しんでいるわけではない」と話す。「それとは反対だ。(中略)まだみんなが彼女のことを思っているのがなんだかうれしい」

 個展はバンコクのパレット・アートスペース(Palette Artspace)で開かれている。会期は8月3日まで。(c)AFP