【7月12日 AFP】(更新)社会主義国のキューバで11日、異例の反政府デモが複数の都市で突発的に広がり、多くの人々が「独裁を打倒せよ」などと声を上げて通りを行進した。ミゲル・ディアスカネル(Miguel Diaz-Canel)大統領は、「闘いの命令は下った。街へ出よ、革命家たち!」とテレビ演説し、デモ隊に立ち向かうよう支持者らに呼び掛けた。

 この30年間で最悪の経済危機に直面しているキューバでは、電力・食料の不足が慢性化している。

 首都ハバナでは、「自由が欲しい」とシュプレヒコールを上げながら、数百人が市内を行進した。デモ隊が国会議事堂前に集まると、重武装の兵士や警官隊が展開。現地のAFP記者によると、警察はデモ隊に催涙ガスを使用し、少なくとも10人を逮捕した。デモ参加者をプラスチック製の棒で殴打する警官らもいたという。

 また、ハバナの南西約30キロの町サンアントニオデロスバニョス(San Antonio de los Banos)では、若者を中心に数千人がデモを行った。

 デモが始まってすぐに治安部隊が展開。その後、同地を訪れたディアスカネル大統領が与党支持者らに囲まれながら、住民のやじを受ける様子を捉えた動画がインターネットに出回った。

 米政府は、キューバでの異例のデモ発生に即座に反応。ジェイク・サリバン(Jake Sullivan)米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が「米国は、キューバ全土における表現と集会の自由を支持し、普遍的な権利を行使している平和的なデモ参加者を標的とし暴力を振るうあらゆる行為を強く非難する」とツイッター(Twitter)で表明した。

 匿名でAFPの取材に応じたサンアントニオデロスバニョス在住の女性は、デモに参加した理由は「電力と食料の不足」に業を煮やしたからだと話した。

 米国の経済制裁下にあるキューバでは、食料を入手するのに長時間並ばなければならず、電力不足のため停電も毎日数時間に及んでいる。また、新型コロナウイルスの流行で医薬品不足も危機的な状況に陥っており、国民の怒りが高まっている。

 キューバは現在、過去最悪の感染拡大に見舞われており、11日の新規感染者は6923人、死者は47人と、いずれも過去最多を記録した。(c)AFP/Katell ABIVEN