【7月10日 AFP】イラク中部や南部の複数の町や国営の発電所で9日、酷暑が続く中で停電が長期化していることに対する抗議デモが行われ、数百人が参加した。

 中部カルバラ(Karbala)近郊のハイラト(Khairat)にある発電所前で行われたデモに参加していたディアー・ワディ(Diaa Wady)さんは、「私たちは電力の復旧を望んでおり、復旧しなければこの発電所から去らない」とAFPに語った。

 主に男性から成るデモ隊は、関係者の車両を取り囲んで攻撃し、後部の窓を破壊して叫び声を上げていた。

 最高気温が連日50度を超え、南部のマイサン(Maysan)州、ワシト(Wasit)州、都市クート(Kut)などでも数十人が抗議デモを行った。

 電力省は、先週南部で始まり他の地域にも広がった停電は、送電線への謎の攻撃が原因だとしている。

 石油輸出国機構(OPEC)第2位の産油国であるイラクでは、数十年に及ぶ紛争とインフラの整備不足で電力供給網が十分に機能しておらず、隣国のイランからガスと電力を購入して電力供給の約3分の1を賄っている。

 しかし、イランは先月29日、イラク電力省が60億ドル(約6600億円)以上の支払いを滞納しているとして、同国への電力供給をストップすると決定した。

 マジド・マハディ・ハントゥーシュ(Majid Mehdi Hantoush)電力相は、イラン政府が電力供給の停止を発表する前日に辞任した。イラクの電力相が夏季を乗り切れずに退任したのは18年連続。

 イラクでは夏季に、酷暑のさなかの停電が頻繁に起きるが、今回は背景に別の要因がある。イラクは支払いが滞っている理由として、イランに米国が制裁を科しているために送金が規制されていること、原油価格の下落による金融危機、そして新型コロナウイルスの感染拡大の影響を挙げている。

 イラク政府はまた、公共料金を支払っている消費者はほとんどおらず、多くが違法に電線を接続して電気を盗んでいると説明している。(c)AFP