【7月6日 AFP】香港で先週、警察官を刺して重傷を負わせ、男がその場で自殺した事件をめぐり、中国では、刺した男の勤務先である香港の豆乳飲料大手、維他ダイ国際集団(ビタソイ・インターナショナル、ダイ=女へんに乃、Vitasoy)に対する不買運動が広がっている。

 81年の歴史を持つ豆乳メーカー、ビタソイの株価は5日、2008年の世界金融危機以来最悪となる安値を付けた。

 金融の中心地・香港の当局が反体制派を徹底的に取り締まる中、同社の株価急落は、香港の政治的混乱の中で多くの企業が直面する可能性がある不安定な状況を物語っている。

 今月1日の夜、警察官を刃物で襲った50歳の男について、当局は「ローンウルフ(一匹おおかみ)型テロ」攻撃だとしている。

 その後、男の「悲劇的な死」を嘆き、遺族へのお悔やみの言葉が書かれたビタソイの従業員による内部メモが流出。中国本土のインターネットでは怒りの声が上がった。

 中国本土が利益の大半を占めるビタソイは、直ちに反応。文書は会社を代表するものではなく、「極めて不適切な表現」が使われていたとし、距離を置く姿勢をみせた。

 しかし、消費者は同社に対する攻撃の手を緩めることはなかった。5日午後には、中国版ツイッター(Twitter)の微博(ウェイボー、Weibo)で「ビタソイは中国本土から出て行け」というトピックが約1億2000万人に閲覧された。

 中国政府は過度に国家主義的なインターネット空間を醸成しており、政府に忠実ではないとみなされたブランドをたたく不買運動(ボイコット)は、非常に効果がある。

 香港警察によると、ビタソイ本社と同じ通りにある別の企業に5日、偽の爆破予告の電話があった。

 一方、香港住民の多くは、香港警察を政治的弾圧を行う機関の一つとみなしており、週末には警官を襲った男に花をささげようとする住民の姿もあった。

 香港政府はそうした行為は、「扇動」や「テロ支援」の容疑で逮捕される可能性があると警告している。(c)AFP