【7月6日 AFP】山形の模様を刻み込んだ5万1000年前のシカの骨がドイツで見つかり、現生人類(ホモ・サピエンス)が中欧にたどり着くよりも早い時期に、ネアンデルタール人は独自の描写的手法を獲得していた可能性が出てきた。研究論文が5日、発表された。

 模様が刻まれたシカの骨が発見されたのは、ネアンデルタール人が住んでいたドイツ中部アインホルンヘーレ(Einhornhoehle)の洞窟。英科学誌「ネイチャー・エコロジー・アンド・エボリューション(Nature Ecology and Evolution)」に論文を掲載した研究者らは、この模様に明らかな実用性はないが、絶滅したネアンデルタール人の創造性に新たな光を投げ掛けるものになるとしている。

 欧州でこれまでに発見された、こうした模様が刻まれた石器時代の遺物の大多数はホモ・サピエンスによるものだ。そのため、長きにわたり専門家らの間では、ネアンデルタール人が象徴的なものを作り始めたのは、ホモ・サピエンスと交配してからと考えられてきた。

 だが今回発見された模様が施されたシカの骨は、放射性炭素年代測定法で少なくとも5万1000年前のもので、ホモ・サピエンスが中欧に到達するより約1万年前のものと研究チームは結論付けている。洞窟から見つかった巨大なシカの脚の骨の表面には、6本の斜線が交わる形で模様が刻み込まれていた。

 研究チームによると、ネアンデルタール人が作ったとされる同時期のものには、斜交平行線やジグザグの模様が付けられた火打ち石のかけらや岩盤、歯などがあるが、今回発見されたシカの骨は「これまでに分かっているネアンデルタール人の文化的な表現の中で最も複雑なものの一つ」だという。(c)AFP