【7月9日 東方新報】中国の長江(揚子江、Yangtze River)流域で、希少な生物が再び姿を現すようになった。今年から長江流域では10年間の禁漁が始まり、その成果が早くも出てきたと注目されている。

 湖北省(Hubei)潜江市(Qianjiang)では6月21日、長江最大の支流・漢江(Han River)で中国国家一級重点保護野生動物のスナメリが見つかった。スナメリは口の両端が上を向いており、いつも笑っているように見えることから「ほほ笑みの天使」といわれている。潜江市内で見つかったのは30年ぶりで、地元では「天使が帰ってきた」と盛り上がっている。

 長江に生息するスナメリは、2006年から2012年の間に推定1040頭に半減。その後、減少ペースは収まったが、2017年の農業省の調査では1012頭にとどまっている。パンダの生息数1800頭を下回り、その希少性から「水中のパンダ」とも呼ばれているが、今後は各地で生息確認が増える可能性がある。

 長江では水質汚染や漁業の乱獲が深刻となり、政府は今年1月1日から、長江流域の重点水域で10年間、禁漁にすることを決めた。水質が浄化して川の生き物の活動域が広がり、えさとなる小魚や栄養物も増えたことで、希少種が復活しつつあるようだ。

 江西省(Jiangxi)にある国内最大の淡水湖、ハ陽湖(Poyang Lake)では今春、「䲘(Guan)」といわれるコイ科の淡水魚が発見された。かつては長江流域に広く分布していたが、最後に確認されたのは2012年だった。また、長江の珍味としてジギョ、フグと並び「長江三鮮」と呼ばれているタチウオの姿も多く見られるようになるなど、各地から朗報が届けられている。

 中国政府は10年間の禁漁措置と並行し、30万人の漁師の転職を勧めている。政府自らが「前代未聞」という大がかりな政策で、今年3月までに11万隻の漁船が使われなくなり、転職した漁師は23万人に上る。

 川の生き物にとって禁漁措置の効果が表れたが、密猟などの懸念は残る。コロナ禍でも経済成長を維持している中国では国内の消費市場は拡大する一方で、長江の珍味のニーズは高い。長江流域の自治体も密猟を最も警戒しており、取り締まりを強化している。(c)東方新報/AFPBB News